公開ラボセミナー

シグナルに応答したマウス多能性幹細胞の状態遷移を予測する

谷内江 綾子(トロント大学)

2015年03月27日(金)    17:00-18:30  理学部3号館412号室   

多能性幹細胞は、特定のシグナル経路の操作により、異なる安定状態を持った細胞集団へと遷移する。今回我々は、シグナル微小環境と、単一細胞レベルでの発現ゆらぎがもたらす集団の不均一性が統合されて、ポピュレーションレベルでの遺伝子制御ネットワーク安定化を導く過程をシミュレーションする手法を開発した。シミュレーションでは、(1)ポピュレーションレベルの発現プロファイル、(2) 異なる細胞集団の感受性、頑強性、ならびに (3)様々な培養条件下で出現するサブポピュレーション、を確率的な単一細胞の状態変化に基づいて定量的に予測する。バイオインフォマティクスによって推定されたマウス胚性幹細胞の遺伝子制御ネットワークに本手法を適用した結果、シグナル培養条件による細胞集団の遷移と特性を非常に良く再現した。更に、これまで知られていなかった Trophectoderm への分化経路の存在を示唆する新規のシグナル組成を in silicoで予測し、in vitro、in vivoで実証した。