第1482回生物科学セミナー

チューブの中で再構成してわかること ~姉妹染色分体間接着の形成機構~

村山 泰斗 准教授(国立遺伝学研究所・遺伝メカニズム研究系)

2024年02月22日(木)    15:30-16:30  理学部3号館326号室   

試験管内再構成実験は、対象とする細胞内経路で働くタンパク質を精製し、その活性を検出することで、分子機構に対する洞察を得る研究方法である。ある種古典的な研究法であるが、メカニズムの解明に対して非常に有効な方法の一つである。本セミナーでは、姉妹染色分体間接着という細胞分裂に必須の染色体構造について、私たちの再構成解析の例を紹介する。真核生物おいて、複製を経て2本になった染色体コピーは、コヒーシンというタンパク質複合体によって接着される。この姉妹染色分体間接着は、有糸分裂において微小管紡錘体による正確な染色体分配を保証する。コヒーシンはリング構造のATPase複合体で、リング内にDNAを通すトポロジカル結合を介して2本の姉妹DNAを束ねて接着を形成すると考えられている。コヒーシンは細胞周期を通じて動的にクロマチンに結合するが、その一部がS期においてDNA複製装置との相互作用を介して2本の複製新生鎖の間で接着を形成する。しかし、その形成機構は不明である。我々は、出芽酵母のコヒーシンとDNA複製関連因子を合わせ30種類以上の精製タンパク質を精製し、接着形成過程を試験管内で再構成した。この結果をもとに、コヒーシンが接着を形成する分子機構について議論する。また、本セミナーで紹介するデータのほとんどは、アガロースゲル電気泳動のゲル写真である。一見つながりがないような結果からどのように結論を得ているかという点についても興味を持っていただけたら幸いである。
参考文献
Coordination of cohesin and DNA replication observed with purified proteins
Yasuto Murayama*, Shizuko Endo, Yumiko Kurokawa, Ayako Kurita, Sanae Iwasaki, Hiroyuki Araki
Nature. 2024 Jan 24. doi: 10.1038/s41586-023-07003-6

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・塩見研究室