人類学演習・談話会

色覚・嗅覚多様性の研究をきっかけとしたヒトの遺伝的多様性についての一考察

河村 正二 先生(東京大学・新領域創成科学研究科・先端生命科学専攻)

2023年10月27日(金)    16:50-18:35  理学部2号館201号室   

ヒトには「色覚異常」と呼ばれる色覚の多様性がある。「正常」色覚はLオプシン、Mオプシン、Sオプシンの3種類の視覚センサーによる3色型色覚であり、「異常」のほとんどははLとMの融合型オプシンによる「赤緑色弱」か、LかMの喪失による2色型色覚からなる。「正常」色覚はL-M色覚、すなわち赤、橙、黄、緑といった赤―緑識別に優れている。しかし、「異常」の当事者には生活に不便を感じない方や検査を受けるまで自覚がなかった方がいるのも事実である。それは赤―緑の色度情報以外にも黄-青の色度情報、明度情報、輪郭視、匂い、音、動きなど様々な情報があるのが普通だからである。私はコスタリカでクモザルやオマキザルの色覚多様性研究を通じて、2色型色覚の利点や色覚と嗅覚の相補性など様々なことを学んだ。それをきっかけに霊長類の嗅覚受容体の進化多様性解析を進めてきた。そこからヒトの色覚・嗅覚多様性をとらえなおし、ヒトの遺伝的多様性一般に関して考察を広げてみた。そういう話をしてみる。

<今後の予定> 
11月 3日 祝日(講義なし)
   10日 Dr. Bernhard Zipfel(近藤担当)
   17日 中山 一大 先生
   21日(火) Dr. Mark Stoneking 
    ※2023年度 第4回生命科学技術国際卓越講義の一環として開催