第1475回生物科学セミナー

ゲノムデータから推定する「全人類のゲノム家系図」

シュパイデル玲雄 博士(UCL Genetics Institute & the Francis Crick Institute)

2023年10月25日(水)    14:55-17:00  理学部2号館201号室及びZoom   

近年、人を含む数々の種において、大規模な全ゲノムシーケンスが行われてきた。さらには、古代人骨からゲノム情報を抽出できるようになり、絶滅したNeanderthal人のゲノムの決定など、古代ゲノムの革命が起きている。これらの進展により、ゲノムの変化・進化が直接観測可能となった。

これらのゲノムデータは病気の仕組み、進化、人類史など、様々な分野においてユニークな情報を持っている。本セミナーでは、このゲノム情報をどのようにして紐解くかについて、いくつか近年の発展を紹介する。

まず、全人類のゲノムを結びつける、「ゲノム家系図」(gene genealogy)のコンセプトを紹介する。近年、この「ゲノム家系図」の推定が大規模なスケールで可能となった[1,2]。我々が開発した手法を紹介し、「ゲノム家系図」を用いてどのようにして過去の集団移動、混血関係、自然選択などを推定できるか、そして、これらのプロセスが我々のゲノムにどのような跡を残すかについて紹介する[3,4,5]。

参考文献
1. Speidel et al, Nature Genetics 2019
2. Kelleher et al. Nature Genetics 2019
3. Speidel et al. MBE 2019
4. Mahajan et al. Nature Genetics 2021
5. Bergstrom et al. Nature 2022

担当:東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・ゲノム人類学研究室