第1006回 生物科学セミナー

上皮の恒常性維持を司る細胞競合の分子基盤

大澤 志津江 先生(京都大学大学院生命科学研究科システム機能学分野)

2015年01月07日(水)    16:40-18:10  理学部2号館 講堂   

細胞競合とは、同種の細胞間において生体内環境(組織)への適応度を競合する現象であり、相対的に適応度の低い細胞(loser)が細胞死を起こして組織から排除され、適応度の高い細胞(winner)がその場に置き換わる、多細胞コミュニティーにおける「適者生存」競争であると考えられている。最近では、この細胞競合現象は、発生過程における優良細胞の選択や癌原性細胞の排除など、多様な生命現象に関わることが示唆されている。私たちはこれまで、ショウジョウバエ上皮をモデル系として、頂端-基底極性(apico-basal極性)が崩壊した上皮細胞が細胞競合により組織から排除される現象に着目してその分子機構を解析してきた。本セミナーでは、細胞競合の分子機構を紹介するとともに、その生理的意義についても議論したい。

参考文献
1. Ohsawa et al., Elimination of oncogenitc neighbors by JNK-mediated engulfment in Drosophila. Developmental Cell, 20, 315-328, 2011

2. Kunimasa, Ohsawa, Igaki, Cell competition: the struggle for existence in multicellular communities “New principles in Developmental Processes” Springer, 27-40, 2014