第1445回生物科学セミナー

時空間制御の視点から解く脳の形成機構

花嶋かりな 教授(早稲田大学 教育・総合科学学術院 先進理工学研究科)

2023年10月04日(水)    16:50-18:35  理学部2号館223号室   

脳神経回路の形成過程では、多様なニューロンが産生され、これらが秩序だったネットワークを構築することで、高度な機能を発現する。特に大脳皮質では、投射標的や分子発現が異なるニューロンから構成される6層構造を、領野ごとに修飾した3次元の神経回路網を構築することで、視覚や聴覚、体性感覚などの固有の感覚情報を処理している。これらのニューロンは、幹細胞が非対称分裂を繰り返しながら経時的に異なる分化能を獲得することで生み出されるが、近年の研究により、その分化能を時空間的に制御するメカニズムが明らかになってきた。本セミナーでは、マウスをモデルとした研究を中心に、神経幹細胞の遺伝子発現とその下流分子を介した大脳皮質ニューロンの運命決定の最新知見を紹介し、大脳皮質ニューロンの産生と分化を制御する仕組みについて解説する。さらにゲノムワイド解析によって明らかになってきた、種特異的な遺伝子発現を介した分化調節機構についても紹介し、進化の過程における大脳皮質の獲得メカニズムについて考察する。

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・脳機能学研究室