第1454回生物科学セミナー

匂いの価値の脳内情報処理と回路メカニズム

風間北斗 チームリーダー(理化学研究所脳神経科学研究センター)

2023年09月26日(火)    16:50-18:35  理学部2号館223号室及びZoom   

食物や個体から発せられる匂いを検出し、それらがもたらしうる報酬や危険性を評価することは、ヒトや動物が適切な行動を選択する上で必要不可欠である。しかし、脳がどのように匂いの価値情報を抽出するかは未だ解明されていない。
 我々は、少数の細胞で構成され、ほ乳類と類似した構造や機能を備えるショウジョウバエ成虫の嗅覚回路に着目し、匂いの価値を決定する脳内情報処理とその回路メカニズムの理解を目指している。本講演では、仮想空間における行動解析、脳領域内全細胞からの網羅的神経活動計測、コネクトーム解析、高次嗅覚回路全体の単一細胞レベルでのシミュレーション等を組み合わせた、最新の取り組みを紹介する。

参考文献
Endo K and Kazama H. (2022). Central organization of a high-dimensional odor space. Current Opinion in Neurobiology 73:10252.
Endo K, Tsuchimoto Y, Kazama H. (2020). Synthesis of conserved odor object representations in a random, divergent-convergent network. Neuron 108, 367-381.
Inada K, Tsuchimoto Y, Kazama H. (2017). Origins of cell-type-specific olfactory processing in the Drosophila mushroom body circuit. Neuron 95, 357-367.
Badel L, Ohta K, Tsuchimoto Y, Kazama H. (2016). Decoding of context-dependent olfactory behavior in Drosophila. Neuron 91, 155-167.

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・睡眠生理学研究室