人類学演習・談話会

日本列島におけるパレオゲノミクスの実践

中込 滋樹 先生(Trinity College Dublin)

2023年07月07日(金)    16:50-18:35  理学部2号館201号室   

日本列島における先史時代は、縄文時代・弥生時代・古墳時代に区分される。先史時代人の起源を明らかにすることは、かつて日本列島で生活していた集団と現代人の関係を理解する上で重要な研究テーマである。自然人類学におけるその主たるモデルが、1991年に埴原和郎が提唱した「日本人の二重構造」である。これは狩猟採集民である縄文人と弥生時代に大陸から稲作文化を導入した渡来人の2つの異なる祖先が現代日本人に受け継がれているとしている。しかし、私たちが古人骨に保存されるゲノムを見てみると、渡来人といっても遺伝的に均一ではなく、大きく2つの祖先に分けられることがわかった。その1つは弥生時代に、もう1つは古墳時代に日本列島へと渡ってきた集団に由来することが明らかとなった。そこで、私たちはゲノムデータに基づく「日本人の三重構造」を提唱した。さらに、この三重構造は本州だけでなく琉球諸島における日本人集団でも確認されたが、その形成過程は地域によって異なることが新たにわかってきた。本講義では、私たちが進めてきたパレオゲノミクス研究に関する最新の知見を紹介する。
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<今後の予定> 
7月  14日 井原 泰雄 先生
   21日 五月女 康作 先生(大橋研担当) ※Sセメ最終回