第1407回生物科学セミナー
トゲウオから探る生活史進化の分子遺伝機構
石川麻乃 准教授（東京大学新領域創成科学研究科）
2023年01月16日(月) 14:55-16:40 Zoomによるweb講義
適応進化において、生存や繁殖に直結する生活史形質の変化は、適応度を直接左右する最も重要な進化プロセスの一つである。一方で、生活史はそれ自体、多くの形態、生理、行動形質が統合して成立する複雑な形質であり、その違いをもたらす遺伝子や遺伝的変異はほとんど明らかになっていない。そこで、私はこれまで、適応進化のモデルとして注目されるトゲウオを用いて、海から淡水域への進出と共に生じた生活史進化の原因遺伝子／変異の同定に取り組んできた。本セミナーでは、近年私たちが明らかにした（１）淡水進出能力の違いを生む鍵変異と（２）季節性繁殖の多様性を生む鍵遺伝子を中心に、生活史の収斂進化パターンや、そのターゲットとなるゲノム領域や制御機構について議論したい。
参考文献
Ishikawa A et al. Phil Trans B
Ishikawa A and Kitano J. Journal of Experimental Biology 223: jeb208975 (2020).
Ishikawa A et al. Science 364 (6443): 886-889 (2019).
Ishikawa A et al. Evolution 71 (3): 565–581 (2017)
担当： 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・附属臨海実験所
