第1401回生物科学セミナー

シダ植物の種多様性の把握と保全に向けた模索

海老原淳 研究主任(国立科学博物館植物研究部)

2022年10月05日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

 小葉類とシダ類から成る「シダ植物」は、特に日本ではその種多様性の解明度は非常に高く、系統関係・生殖様式・倍数性・分布などの属性情報が豊富に利用でき、さらに精度を高めるべく研究が続けられている。一方で、日本に産する721種(亜種・変種含む)の35.5%に相当する256種が環境省レッドリストに掲載されており、そのうち84種がもっとも絶滅のおそれの高い絶滅危惧IA類に分類されている事実は、シカの食害が主要因となって多くの種や個体群の存続が危機的である現状を物語る。実効性のある保全事業はまだほとんど行われていない中、研究材料の収集すら危うくなりつつある。そのような状況下で、種多様性を把握するための研究と同時並行で、絶滅寸前種の保全を模索している段階にある。今何をすべきなのか、実際の事例を紹介しながら考えたい。

参考文献
Ebihara, A. and J. H. Nitta, 2019. An update and reassessment of fern and lycophyte diversity data in the Japanese Archipelago. Journal of Plant Research 132: 723–738.
https://doi.org/10.1007/s10265-019-01137-3

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・植物生態学研究室