第1395回生物科学セミナー

体内受精と自然免疫

河野菜摘子 准教授(明治大学農学部生命科学科)

2022年04月20日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

私たちヒトを含む哺乳類において、精子はメス生殖器を通過して卵へたどり着き受精を完了させている。しかしその過程を解析する手段が乏しく、そのしくみはほとんど明らかとなっていない。多くの動物において、精子は卵に受精するために特化した形態・機能を有しており、精子形成が完了した時点で遺伝子の転写および翻訳は行われていないと考えられている。一方、精子とともに雌生殖器へ運ばれる精漿には、精子の運動能や受精能を制御し、受精効率を高める働きがあると古くから考えられてきたが、実際に体内で観察を行うのは困難であった。本セミナーでは、マウスを用いて精漿タンパク質Seminal Vesicle Secretion 2 (SVS2)の機能に着目し解析を行うことで見えてきた、体内受精時におけるメスの免疫機構とそれに対応するオスの生殖戦略について紹介したい。

参考文献
Kawano, N. et al., Seminal vesicle protein SVS2 is required for sperm survival in the uterus. PNAS 111 (11), 4145-4150 (2014)
Shindo M. et al., Deletion of a seminal gene cluster reinforces a crucial role of SVS2 in male fertility. IJMS 20 (18), 4557.

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・附属臨海実験所