第1394回生物科学セミナー

昆虫の小さな脳で起こった「好み」の進化の神経機構

石川由希 講師(名古屋大学大学院理学研究科)

2022年04月13日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

動物の行動は好みに支配されている。メスに求愛したり、オスを受け入れたり、餌を食べたり、住むところを選んだり…。これら多くの場面で、動物は特定の対象を選ぶ。この好みは当然ながら種ごとに異なる。花を食べる種がいればキノコを食べる種もいる。また求愛や交配は同種に対して選択的に示される。このようなさまざまな好みの多様性が地球上の生物の共存を支えているのである。動物の好みは脳内の神経機構における情報処理によって決まる。では好みの進化はどのような神経機構によって成立するのだろうか?この謎を解明するために、私は、遺伝学や神経科学のモデル生物であるキイロショウジョウバエとその近縁種を用い、フェロモン選好性や求愛歌選好性の進化の背景にある神経機構の解明に取り組んでいる。さらに最近は、花と緊密な関係を持つカザリショウジョウバエの訪花行動やテリトリー行動についての研究も新たにスタートさせた。本セミナーではこれら最新の成果をわかりやすく紹介する。

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・細胞生理化学研究室