第1005回生物科学セミナー

ATP合成酵素の1分子生物物理&マイクロ/ナノ溶液アレイを用いた新しい1分子計測技術

野地 博行 教授(工学系研究科応用化学専攻)

2014年11月26日(水)    16:40-18:10  理学部2号館 講堂   

私は、これまでATP合成酵素を構成するATP駆動型回転モーターF1-ATPaseの1分子計測に取り組んできた。現在、F1-ATPaseの分子メカニズムは、少なくとも分子モーター中では最も理解が進んだと言えるに至っている。しかし、いくつかの重要な課題が残されている。本発表の前半では、F1-ATPaseの分子機構の理解に関する現在の到達点を確認した後、残された課題について解説する。さらに、その解決に関する見通しについて議論したい。
私は、F1-ATPaseの研究のために様々な計測技術も開発してきた。講演後半では、その中から超微小溶液アレイに基づくデジタルバイオアッセイ(1分子ELISA、1ウイルス粒子検出法、1分子トランスポーター計測等)について紹介する。また、超微小溶液アレイを用いた機能分子・機能分子システムスクリーニング技術の展望についても紹介したい。時間に余裕が有れば、超微小溶液アレイプロジェクトの最終ゴールである人工細胞の創成の意義や方法論について意見交換をしたい。

参考文献
「1分子ナノバイオ計測」野地博行(編)、化学同人