第1356回生物科学セミナー

肥満と光応答を基軸とした外界刺激応答メカニズムの解明

羽鳥 恵 特任准教授(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所)

2020年12月23日(水)    17:05-18:35  WebExによるweb講義   

肥満は様々な疾患の要因となり、肥満解消のためには代謝恒常性の理解が必要である。エネルギー代謝は概日時計に支配されて一日周期のリズムを示し、概日時計は食事と光により調節される。我々は概日リズムの側面から代謝疾患理解に取り組み、摂食の時間帯を制限するだけでマウスの肥満が防止されることを見出した。光を感じて時刻調節を担うメラノプシンというGタンパク質共役型レセプターにも着目し、網膜や脳神経系での機能や、視覚オプシンとは異なる無脊椎動物タイプの細胞シグナル伝達の機構解析を進めている。さらに、代謝と非視覚光受容の両要素が体内で統合されている可能性を見出した。後天的な操作のための低分子化合物のスクリーニング・設計と原子分解能での解析を駆使し、外界刺激を受容しても維持される恒常性機構を理解したい。In vivoからのアプローチのため哺乳類モデル生物として夜行性齧歯類に加え、小型昼行性霊長類の肥満研究への初の導入にも成功しているため、今後の展開、領域へのインパクトやヒトのQOL向上への貢献についても議論したい。

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・飯野研究室