岩崎研公開ラボセミナー

海から川や湖へ!魚の淡水進出を支えた鍵遺伝子の発見

石川 麻乃 博士(国立遺伝学研究所)

2019年06月07日(金)    16:00-17:30  理学部3号館 412号室   

 魚は、進化の過程で、海から川や湖などの淡水域へ何度も進出しながら、さまざまな形や性質を獲得してきました。海と淡水域は、栄養分や浸透圧などに大きな違いがあるため、一部の魚たちは淡水域に何度も進出する一方で、全く淡水域に進出できない魚たちも多くいます。しかし、その原因となる遺伝子は分かっていませんでした。演者らは、海の餌に多く含まれ、淡水の餌には少ない必須脂肪酸ドコサヘキサエン酸 (DHA)に注目し、淡水域に進出したトゲウオは、このDHAを作る合成酵素Fads2遺伝子を複数持つため、DHAの少ない淡水の餌でも生きられることを発見しました(A. Ishikawa et al., Science 364, 831-832. (2019))。Fads2遺伝子は、他の幅広い種類の魚でも、淡水域に進出していない種に比べ、進出した種で増えていたことから、これまで何度も起こってきた魚の淡水域への進出のたびに鍵となる役割を果たしていたと考えられます。
 本講演では、この他の最新の研究成果も交えながら、生物の多様な生活史を生み出した適応進化の分子遺伝機構について議論する予定です。