人類学演習Ⅱ/人類学セミナー2

戦没者遺骨収集最前線

楢崎 修一郎 先生(日本戦没者遺骨収集推進協会)

2019年01月11日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 201号室   

先の大戦では、国内外の戦没者は約310万人(軍人及び民間人)だが、海外での戦没者は約240万人(沖縄と硫黄島の戦没者を含む)である。2018年6月30日現在、この内、約128万人分の遺骨が収骨されている。海外には約112万人分の遺骨が未収骨であるが、飛行機や船で海没したために収骨が困難な海没遺骨が約30万人、中国や韓国など相手国事情から収骨が困難な遺骨が約23万人分と約53万人分は収骨が困難である。したがって、現時点では収骨対象は約59万人分となっている。
 本講演者は、2011年からこれまで、主に太平洋地域に20回派遣され約700体の遺骨を鑑定してきた。これまでの派遣地域は、サイパン島(北マリアナ諸島)に5回・テニアン島(北マリアナ諸島)に4回・ペリリュー島(パラオ共和国)に3回・クェゼリン環礁(マーシャル諸島)に2回・ミリ環礁(マーシャル諸島)に1回・ウォレアイ環礁(ミクロネシア連邦)に1回・チューク(ミクロネシア連邦)に1回・ツバル(ツバル共和国)に1回・サハリン(ロシア連邦)に1回・ミャンマーに1回の合計20回である。
 これらの派遣地域の内、ペリリュー島・クェゼリン環礁・ミリ環礁・ウォレアイ環礁・チューク・ツバル・サハリンは、旧日本軍兵士のみであった。しかしながら、サイパン島やテニアン島では、旧日本軍兵士の他に民間人が多数収骨された。2018年8月のサイパン調査では、現地の古代チャモロ人が出土した。また、2018年11月のミャンマーでは、旧日本軍兵士の他に現地のミャンマー人も出土している。
 本講演では、これらの事例について報告する。