榎本研公開ラボセミナー

ショウジョウバエの感覚神経系においては刺激への応答が発生の環境にあわせ制御される

兼子拓也(University of Michigan 博士課程)

2017年10月27日(金)    14:00-15:00  理学部2号館 201号室   

発生の課程で外部環境から与えられた情報は、成熟期の情報認識にどのような影響を及ぼすのだろうか。我々は痛覚刺激の多い環境で発生したショウジョウバエでは、痛覚刺激からの忌避行動が成熟期に抑制されることを見出した。更にその神経メカニズムとして、セロトニンによる痛覚受容神経の修飾を明らかにした。中枢神経系のセロトニン分泌神経は痛覚受容神経の下流で活性化されると、痛覚受容神経の軸索末端に働きかけ、そこからの情報伝達を抑制するようである。重要なことに、発生期に痛覚刺激を多く経験した幼虫では、痛覚受容神経のセロトニン感受性が上昇し、実際に痛覚受容神経からの情報伝達は抑制されていた。したがって本研究により、痛覚刺激からの忌避行動が発生環境に応じて最適化されること、更にそのメカニズムがセロトニンを介したフィードバック神経回路であることが明らかにされた。