第1142回生物科学セミナー

研究発表の技術:なぜ「広海君の話は3回聞いてもわからん」のか?

広海 健 先生(国立遺伝学研究所・リサーチ・アドミニストレーター室長)

2017年11月22日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

 今から40年ほど前,東大理学部にプレゼンテーションが下手で有名な大学院生がいた.指導教員に言わせると,「広海君の話は3回聞いてもわからん」ということである.学生にしてみれば,なんとも理不尽なコメントである.自分では論理的に話しているつもりだし,内容の理解に必要な背景知識も十分提供していた.それでもわからんのは指導教員の理解力に(以下略).わからん理由はわからなかったが,その学生は博士号取得後留学し,就職に苦労はしたもののアメリカでPIとなり, アメリカでテニュアは取れなかったものの日本で教授にまでなった.
 教授になっても指導教員の影響は残っているものである.その学生は研究発表の方法にこだわりを持っていた.所属機関(国立遺伝学研究所)では科学英語教育に積極的に関わり,アメリカから講師を呼んでScientific Writingのワークショップを企画するなど,研究成果の共有や研究者間の相互理解の方法に興味を持ち続けた.同僚の平田たつみ教授が科学英語プレゼンテーションのカリキュラムを開発するのにも協力した.「遺伝研メソッド」と名付けられたこのカリキュラムは英語による研究発表の訓練を通じて,科学的思考力や議論する力を培うもので,日本人学生だけでなく,留学生やポスドク/教員にも好評である.
 本セミナーでは「遺伝研メソッド」から「言語に依存しない発表技術」を紹介する(聴衆の負担を減らす技,期待感の作り方,など).「聴衆の特性」を再検討することを通じて「なぜ3回聞いてもわからないのか」という謎を解明する.
注:本日の生物科学特別講義(13:00-16:30)は内容的には本セミナーと重なっていますが,異なる「味付け」になっています.1回聞いただけではわからんと思われる方は両方ともお試しください.

参考文献
平田 たつみ,タジ・ゴルマン,広海 健:遺伝研メソッドで学ぶ科学英語プレゼンテーション – 感じる力、考える力、討論する力を育てる dZERO (2016)
「遺伝研メソッド」カリキュラムのうち,「Q&Aを楽しもう!」のユニットについては,授業シラバスからダウンロードできます.
https://goo.gl/wjE2wW (「Asking Questions」の週参照)