第1161回生物科学セミナー

エピジェネティクスの構造生物学

胡桃坂仁志 教授(早稲田大学理工学術院)

2017年07月06日(Thu)    14:00-15:00  理学部3号館 327号室   

エピジェネティクスは、高次元でのゲノムDNA機能の調節機構である。真核生物では、ゲノムDNAの転写、複製、修復、組換えなどの諸反応は、ヒストンとDNAとの複合体である“クロマチン”において行われている。クロマチンはこれらのDNAの諸反応に対して阻害的である。そのため、クロマチンの基盤構造体であるヌクレオソームの立体構造多型やその動的性質の解明は、真核生物ゲノムDNAの機能制御機構を理解する上で重要である。ヌクレオソームでは、8分子のヒストン(H2A、H2B、H3、H4がそれぞれ2分子)が、およそ150 塩基対のDNAを1.65回転巻き付けている。セントロメアやテロメアなどの染色体機能ドメインや、転写が活性化および抑制されたユークロマチンやヘテロクロマチンなど、特化した機能を有する染色体領域では、特殊なクロマチン構造と動的性質が形成されていると考えられている。そのような、クロマチン高次構造とダイナミクスによるゲノムDNA機能制御は、クロマチン結合タンパク質、ヒストンバリアント、そしてヒストン翻訳後修飾などの協調によって成し遂げられている。しかし、その構造生物学的解析はいまだ立ち遅れている。近年、X線結晶構造解析の高度化に加え、クライオ電子顕微鏡の発展によって、クロマチンの構造解析が急速に進展しつつある。本セミナーでは、構造生物学的アプローチを基軸とした最新の研究を紹介し、真核生物でのゲノムDNAの“エピジェネティック”な機能制御メカニズムについて議論したい。