第1130回生物科学セミナー

脊索動物の進化の分子機構を考える:ホヤの胚発生の体系的解析からわかってきたこと

佐藤 ゆたか 准教授(京都大学大学院理学研究科生物学専攻)

2017年02月21日(火)    16:00-17:45  理学部2号館 講堂   

ホヤは、脊椎動物と同じ脊索動物門に属する動物で、脊椎動物にもっとも近縁な動物群である尾索動物の一種です。この動物は我々と基本的には同じ体制を持っており、オタマジャクシ型の幼生を生じます。一方で、多くの原始的と考えられる形質を持っており、脊索動物がどのように誕生し進化していったのかを考えるうえで貴重なモデル生物です。ホヤは脊椎動物に比べ、単純なゲノムと単純な発生様式を持つため、網羅的な解析が比較的容易であり、私のグループでは、その発生の遺伝子調節ネットワークを網羅的かつ体系的に明らかにしてきました。脊索動物の誕生と進化は、原腸胚のオーガナイザー、頭部プラコード、神経堤細胞の獲得と関連付けられてしばしば議論されます。ホヤ胚の遺伝子調節ネットワークの全体像から見えてきた原始脊索動物から脊椎動物にいたる過程でおこったと考えられる変化を議論したいと思います。

参考文献
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