人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

脊椎動物におけるゲノム高次構造研究

熊谷 真彦先生(動物発生学研究室)

2017年01月20日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 323号室   

 真核生物のゲノムは小さな核内に収められている。ヒトゲノムは2mにもおよぶ長いDNA分子が数μmの細胞核空間におしこめられつつ、遺伝子発現を正確に制御し、発生過程において多様な細胞の分化を導いていることはある意味驚きである。このような機能を実現するために、DNA分子は核内でどのように秩序立てられているのだろうか?近年、DNA分子同士の接触情報を取得するChromosome Conformation Capture法とこの応用手法(Hi-C法)により、DNAの高次構造がゲノムワイドに解析され、ゲノムが階層的に折りたたまれていることが解ってきた。哺乳類細胞の研究から数百万塩基長におよぶコンパートメントと呼ばれる大きな構造、その中にトポロジカルドメインと呼ばれる数十万塩基長の構造が見出された。これらの折りたたみ単位は機能的なドメインとして働き、遺伝子の転写制御と密接に関わっていることが明らかとなってきた。またトポロジカルドメインが壊れるような変異と遺伝病との関連も見つかっている。我々はメダカを用いてHi-C法によりゲノム高次構造を解析している。発生過程の未分化状態の胚、分化後の組織での高次構造の違いや、メダカ-ヒト間の比較により脊椎動物における高次構造の普遍性・多様性といった点に着目し解析している。今回はこれまでのゲノム高次構造研究を概観し、我々の最新の解析結果を紹介し議論したい。