第1051回生物科学セミナー

TRPチャネルによる温度感知の分子メカニズム解明に向けた取り組み

日野智也博士(鳥取大学大学院工学研究科生物工学専攻)

2015年05月29日(金)    13:00-14:00  理学部 3号館326号室   

Transient Receptor Potential (TRP) イオンチャネルファミリーは、真核生物に広く分布し、細胞外部の温度、様々な化合物、浸透圧、機械刺激など、生命の恒常性を脅かす多様な外部環境情報を感知するセンサーとして機能する膜タンパク質である。TRPチャネルは、アミノ酸配列の類似性により6つのファミリーに区分され、ヒトゲノムでは合計27種類存在するが、いずれも共通構造として電位依存性カリウムチャネルと類似した6回膜貫通αヘリックス構造とTRPファミリーごとで異なる細胞内ドメインから構成される。TRPチャネルファミリーの中で、温度変化に応答して活性化するものはこれまでに10種類確認されており、「冷たい、熱い」などの温度感覚の発生や発熱時の免疫機能の増強など温度変化に伴う生理機能の発現に深く関わっていることが明らかになっている。われわれは、これら温度に依存した活性化能を持つTRPチャネルが如何にして感知する温度を見分けているのか、さらには温度に依存した活性化の分子メカニズムを明らかにする事を目的として、構造生物学的研究を行っている。
本セミナーでは、まず始めに講演者がこれまでに行ってきた膜タンパク質のX線結晶構造解析に関する成果について概説し、ついで現在行っているTRPチャネルの立体構造解明へ向けた取り組みについて紹介する。