研究内容

個性を生み出す脳神経ネットワークの作動原理

私たちは、遺伝要因と環境要因の組み合わせにより脳がカスタマイズされる仕組みを知る事により、ヒトの個性や精神疾患のメカニズム解明を目指しています。ヒトの個性や性格は、個々人が生まれもつ遺伝情報の差異に加えて、そのヒトが育つ環境に大きく依存すると考えられています。たとえば、遺伝子が相同である一卵性双生児でも、異なる環境で育つと全く異なる個性を示します。ヒトの心を生み出すマシーナリーの中核が脳であるならば、ヒトの個性はおそらく脳構造(神経回路)の微妙な違いから生じると予想できます。実際に、外部環境からの神経入力が神経ネットワークの再編を誘導することがわかってきました。従って、個性の成り立ちを理解するためには、外部環境(情報)と脳との関係を遺伝子・細胞・回路それぞれの階層で理解する必要があります。私たちは、外部情報依存的に神経ネットワークが再編成されるメカニズムと、新たなニューロンが生みだされるメカニズム(神経新生)に着目して研究を進めています。

もう1つの目標として、脳神経回路の違いが如何にして行動レベルの差異を生み出すのかという問題にチャレンジしています。生物は、光やにおいなど、外界から入ってくる複数の情報に基づいて価値判断を行い、それを適切な行動へと繋げることができます。興味深いことに、動物は、発生ステージや性差に依存して、同じ物質に対して正反対の嗜好性行動を示すことがあります。このような発生時期や雌雄に依存した「嗜好性の個性」を生み出す機構が分かれば、「個性を生み出す神経基盤」の理解に繋がると期待できます。私たちは、マウスやショウジョウバエを個体モデルとして、嗜好性(好き・嫌い)を規定する神経基盤を明らかにするべく研究を進めています。

2017年10月から東京大学ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)が新たに始動し「ヒトの知性はどのように生まれたのか?」という究極の問題に迫ろうとしています。私達も中核研究室としてWPI-IRCNに参画し、ヒトの知性を生み出す構造的・進化的基盤を明らかにするための研究を行なっています。

現在、以下の研究に取り組んでいます。

○キーワード○

・ミトコンドリア
・エピジェネティクス
・カルシウム振動
・ニューロン・グリア相互作用
・ゲノム編集
・感覚情報のゲート機構(sensory gating)
・空間的注意(attention)
・ADHD(注意欠陥・多動性障害
・価値判断
・概日周期(サーカディアンリズム)
・栄養(エネルギー)状態
・神経活動レコーディング
・二光子イメージング
・ヴァーチャルリアリティー
・神経幹細胞
・デフォルトモードネットワーク

○当研究室では主としてショウジョウバエとマウスを個体モデルとして研究を進めています。主要な研究技法は以下になります○

・アデノウィルス・ベクターによるマウス脳内特定ニューロンの遺伝子改編
・ニューロンの挙動や活動を追跡するin vivoライブイメージング技術
・コンディショナル・ノックアウトマウスやトランスジェニックマウスの作製・解析
・光遺伝学技術
・嗜好性行動解析技術
・ショウジョウバエの神経クローン解析技術