Information お知らせ

多様性起源学研究室 (野崎研) の出版や報道、受賞、イベントに関するお知らせです。

2014年03月14日

ゴニウム両交配型配偶子におけるGCS1の挙動  当研究室の豊岡博子博士らと、早稲田大学、京都大学、カンザス州立大学、国立遺伝学研究所との共同研究成果の論文が3月14日付で Eukaryotic Cell からオンライン出版されました。
 私たちヒトを含む多くの真核生物には、雄と雌という二つの性が存在します。雄は小さくて運動性をもつ配偶子(精子)を、雌は大きくて動かない配偶子(卵)を作ります。精子と卵が出会い、融合することで新しい個体が生まれます。この生殖様式は卵生殖と呼ばれ、真核生物の進化の歴史の中で、同じ大きさの配偶子同士の接合(同型配偶)から独立に複数回、生じたと考えられます。近年陸上植物から、配偶子の融合に働くタンパク質GCS1(GENERATIVE CELL SPECIFIC 1)が発見されました(Mori et al. 2006 Nat. Cell Biol.)。GCS1は、高等動植物を含む真核生物の幅広い系統で保存されているため、真核生物に共通する配偶子融合メカニズムの解明の糸口として注目されています。このGCS1は、多くの生物で雄側の配偶子で働くことが知られていましたが、「どのようなメカニズムによってGCS1の働きが雄側に限定されているのか」に焦点を当てた研究はありませんでした。
 本論文では、二つの性(プラス/マイナス)の間で配偶子のかたちに差異のない同型配偶の緑藻ゴニウム(Gonium pectorale)を用いて、GCS1タンパク質がそれぞれの性で異なった制御を受けていることを明らかにしました。ゴニウムでは両性の配偶子は、活性化するとそれぞれ前方部に突起状の構造(接合突起)を伸ばし、両性の接合突起が接着し融合することで接合が始まります。本研究の成果により、マイナス交配型(雄に相当)配偶子では、活性化前はGCS1タンパク質が細胞の前方部(接合突起の原基)に局在し、活性化されると接合突起の表面に移行することが分かりました。これに対し、プラス交配型(雌に相当)配偶子では、活性化前はGCS1タンパク質が細胞の内部に留まり、活性化に伴って消失することが分かりました。これらの制御メカニズムにより、GCS1はマイナス交配型特異的に働くことができると考えられます。このゴニウムで見出されたGCS1の挙動の性差は、真核生物における雌雄差の根源的性質である可能性もあり、今後の研究の進展が期待されます。

Kawai-Toyooka H., Mori T., Hamaji T., Suzuki M., Olson B.J.S.C., Uemura T., Ueda T., Nakano A., Toyoda A., Fujiyama A., and Nozaki H. (2014)
Sex-specific post-translational regulation of the gamete fusogen GCS1 in the isogamous volvocine alga Gonium pectorale.
Eukaryotic Cell, Published ahead of print, doi:10.1128/EC.00330-13

2014年03月03日

伊佐沼での採集風景 2010年7月
伊佐沼での採集風景

 当研究室の野崎久義准教授、博士課程3年の松崎令さん、元修士課程の山田敏寛さんと、立命館大学、慶應義塾大学との共同研究成果の論文が3月3日付で BMC Evolutionary Biology から出版されました。
 群体性ボルボックス目は多細胞化や有性生殖の進化を研究する上で格好の生物群です。この中のボルボックス科は、娘群体形成初期に典型的な反転(inversion)を行うことと、群体全体を包む連続した細胞壁構造をもつことを特徴とします。この科に含まれる藻類の内、パンドリナ(Pandorina)やボルボックス(Volvox)の群体は回転楕円体ですが、プラチドリナ(Platydorina)1属だけは平板状の群体を持っています。2000年から行っている葉緑体5遺伝子系統解析により、群体性ボルボックス目の基本的な系統関係が明らかにされた一方、プラチドリナの姉妹群については不明でした(Nozaki et al. 2000, MPE; Herron et al. 2009, PNAS)。
本論文では埼玉県伊佐沼より採取したサンプルから、ボルボックス科の新属 Colemanosphaera (コルマノスファエラ)2種を分離培養しました。両種とも、32細胞性である点、回転楕円体の栄養群体を持ち、非生殖細胞の分化が認められない点でボルボックス科のユードリナ(Eudorina)やヤマギシエラ(Yamagishiella)と類似していましたが、細胞の形態的特徴では区別されました。葉緑体5遺伝子系統解析の結果では、Colemanosphaera の2種は姉妹種となり、プラチドリナと強固な単系統群を形成しました。また、Colemanosphaera の細胞形態や、2種の Colemanosphaera のうち1種で観察された特異な体外受精型の異形配偶接合過程は、プラチドリナと類似していました。これらの結果から、新属 Colemanosphaera は、プラチドリナが平板群体に進化する直前の祖先的な形態を保持している "ミッシングリンク" であると考えられます。Colemanosphaera は稀産ですが、過去のDNA配列データや形態学的記載と今回の培養株を比較したところ、ヨーロッパにも2種分布することが明らかになりました。世界の淡水域には、未発見の生物がまだまだ沢山存在すると考えられます。

Hisayoshi Nozaki, Toshihiro K Yamada, Fumio Takahashi, Ryo Matsuzaki, Takashi Nakada (2014)
New "missing link" genus of the colonial volvocine green algae gives insights into the evolution of oogamy.
BMC Evolutionary Biology 14: 37. doi:10.1186/1471-2148-14-37

2014年03月03日

 ラジオ沖縄「立川志ぃさーのヤマトde沖縄タイム」のパーソナリティであるうちな〜噺家の立川志ぃさーさんと、アシスタントで歌手のシーサー玉城さんが、当研究室博士課程1年の新垣陽子さんと研究成果であるシアワセモ(詳細)を取材するために当研究室に来訪されました。お二人は番組収録後、研究室居室にて絶妙なトークを披露して下さり、研究室メンバーを大いに楽しませて下さいました。
取材内容は4月頃放送・配信予定です。
ラジオ沖縄 立川志ぃさーのヤマトde沖縄タイムポッドキャスト配信あり

集合写真
上段左から:立川さん、新垣さん、野崎准教授、落語研究会所属の4年生 泉さん、玉城さん
立川さん、玉城さん、どうもありがとうございました!

2014年02月11日

Cover image of Sexual Reproduction in Animals and Plants  当研究室の野崎久義准教授が執筆に加わった総説集、「Sexual Reproduction in Animals and Plants」がオンライン公開されました。
この総説は2012年11月12日から16日にかけて名古屋で開催された国際学会 International Symposium on the Mechanisms of Sexual Reproduction in Animals and Plants新学術領域研究 動植物アロ認証 主催)のプロシーディングとして作成されたものです。動物、植物、単細胞生物といった広範囲な生物群を対象とした、生殖研究の最新の知見が集められています。本総説集の全ての記事は現在 Open Access となっており、誰でも閲覧することができます。

Hitoshi Sawada, Naokazu Inoue & Megumi Iwano (Eds.) (2014)
Sexual Reproduction in Animals and Plants
Springer Japan, doi:10.1007/978-4-431-54589-7

野崎久義准教授 担当記事
Hisayoshi Nozaki (2014)
Origin of Female/Male Gender as Deduced by the Mating-Type Loci of the Colonial Volvocalean Greens.
In: Sexual Reproduction in Animals and Plants, pp 215-227, doi:0.1007/978-4-431-54589-7_19

2014年02月03日

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左:Volvox carteri コロニー全体像
右:DNAを染色したV. carteri の細胞、
△は共生細菌を示す

 当研究室の川舩かおるさん、野崎久義准教授と東京工業大学 本郷研究室との共同研究の成果論文が2月3日付で国際藻類学会誌 Phycologia から出版されました。
 本論文では緑藻ボルボックス・カルテリ(Volvox carteri)の細胞内に共生している細菌の分子同定を行い、細菌がミトコンドリアの起源に近縁なグループである "リケッチア科" に含まれる事を明らかにしました。
ボルボックス・カルテリから発見されたリケッチア科の細菌は、先行研究においてボルボックス目の緑藻であるカルテリア(Carteria cerasiformis)やプレオドリナ(Pleodorina japonica)から発見された細菌 "MIDORIKO" に非常に近縁である一方、調査した9株のボルボックス・カルテリのうち細菌を保有している株は1株しかありませんでした。"MIDORIKO" の感染を媒介する経路は未発見ですが、これらの結果から "MIDORIKO" が異なる3種の緑藻に個別に感染した事が示唆されました。

Kaoru Kawafune, Yuichi Hongoh, and Hisayoshi Nozaki (2014)
A rickettsial endosymbiont inhabiting the cytoplasm of Volvox carteri (Volvocales, Chlorophyceae).
Phycologia 53(1): 95-99. doi:10.2216/13-193.1

2014年01月09日

 2014年1月8日から10日にかけて開催された新学術領域研究 動植物アロ認証 第8回領域会議に野崎研のメンバーが参加し、特任研究員 豊岡博子さんの発表が最優秀ポスター賞を受賞しました。

○豊岡 博子, 森 稔幸, 鈴木 雅大, 野崎 久義
同型配偶ゴニウムにおける配偶子融合因子 GCS1 の性特異的制御

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授賞式の様子/賞状と副賞の特製マグカップ

2013年12月18日

日経新聞  当研究室の鈴木雅大特任研究員、野崎久義准教授と、筑波大学、国立科学博物館による、岩手県山田町から発見された新種の紅藻、ナンブワツナギソウに関する共同研究の成果が東京大学理学系研究科からプレスリリースされました。関連記事が日本経済新聞(2013年12月19日付朝刊)及び各社Webニュースに取り上げられ、また岩手めんこいテレビでも紹介されました。
 なお、本研究成果は国際藻類学会誌 Phycologia に掲載されています。
 詳細は以下のリンク先をご覧ください。

Masahiro Suzuki, Tetsuo Hashimoto, Taiju Kitayama and Hisayoshi Nozaki (2013)
Morphological and molecular evidence support the recognition of Champia lubrica sp. nov. (Champiaceae, Rhodophyta) from Japan. Phycologia 52(6):609-617. DOI: 10.2216/13-128.1
東京大学理学系研究科 プレスリリース:
三陸山田町で発見した新種ナンブワツナギソウ — 岩手県からの新種海藻75年ぶりの発見 —

2013年12月12日

 当研究室の新垣陽子さんら、東京大学理学系研究科と、名古屋大学、米国カンザス州立大学による、緑藻「シアワセモ」(テトラバエナ Tetrabaena socialis)の多細胞性に関する共同研究の論文が12月11日付で国際一般科学誌PLOS ONEからオンライン出版されました。また、研究成果が東京大学理学系研究科のプレスリリースに掲載され、関連記事が朝日新聞(2013年12月12日付夕刊)や各社Webニュースに取り上げられました。
 詳細は以下のリンク先をご覧ください。

Yoko Arakaki, Hiroko Kawai-Toyooka, Yuki Hamamura, Tetsuya Higashiyama, Akira Noga, Masafumi Hirono, Bradley J. S. C. Olson, Hisayoshi Nozaki (2013)
The Simplest Integrated Multicellular Organism Unveiled. PLOS ONE, e81641. DOI: 10.1371/journal.pone.0081641
東京大学理学系研究科 プレスリリース:
世界最小の多細胞生物の発掘 — 4細胞で2億年間ハッピーな生きた化石 "しあわせ藻" —
朝日新聞 2013年12月12日夕刊 総合面
朝日新聞デジタル 2013年12月12日:「シアワセモ」世界最小の多細胞生物と確認 その姿は…(リンク先に動画あり)
興南学園Web:新垣陽子さん「シアワセモ」世界最小の多細胞生物と確認
日経産業新聞 2013年12月17日
沖縄タイムス 2014年1月24日 社会面
沖縄タイムスプラス 2014年1月24日:世界最小多細胞生物確認 東大の新垣さんら
Newton 2014年3月号 SCIENCE SENSOR
(同記事は日経プレスリリース、Yahooニュース等にも掲載されました)

朝日新聞東大プレス

2013年08月02日

 2013年7月31日から8月3日の4日間、カナダ・ニューブランズウィック大学で開催されたSecond International Volvox Conference (第二回国際ボルボックス会議)に、野崎研のメンバーが参加し、特任研究員である豊岡博子さんの発表がBest Poster賞を受賞しました。

○Hiroko Kawai-Toyooka, Toshiyuki Mori, Takashi Hamaji, Masahiro Suzuki, Bradley J.S.C. Olson and Hisayoshi Nozaki
MATING TYPE-SPECIFIC TWO-STEP REGULATION FOR THE FUSOGEN GCS1 IN THE ISOGAMOUS VOLVOCINE ALGA GONIUM PECTORALE

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授賞式の様子

2013年05月16日

 当研究室と京都大学、シンガポール、アメリカの研究室との共闘研究の論文が5月16日付で国際一般科学誌 PLoS ONE に出版されました。
 今回、緑藻ゴニウム属のうち、国立環境研究所微生物系統保存施設(NIES)で利用できる全種から性決定因子 MID ホモログを同定し、本ホモログの有無と同型配偶のプラスとマイナスの交配型を客観的に対応付けすることで、初めて種間で統一した交配型(MID mating type, non-MID mating type)を提案することができました。また、緑藻系統群のホモタリック(自殖)株での性決定因子ホモログを初めて報告しました。

Hamaji T., Ferris P.J., Nishii I., Nishimura Y. & Nozaki H. 2013.
Distribution of the Sex-Determining Gene MID and Molecular Correspondence of Mating Types within the Isogamous Genus Gonium (Volvocales, Chlorophyta).
PLoS ONE 8(5): e64385. doi:10.1371/journal.pone.0064385

2013年05月03日

 当研究室博士課程3年の松崎令さんらによる論文が5月3日付の国際藻類学会誌(Phycologia)に掲載されました。
  この論文では、神奈川県海老名市の水田から単離された微細緑藻クロロモナス属の新規培養株に対し、光学・電子顕微鏡による比較形態解析、複数の遺伝子配列を用いた系統解析、及び核 ribosomal DNA internal transcribed spacer 2(ITS2)二次構造の比較を行いました。光学顕微鏡下において、本株は狭義の Chloromonas reticulataMatsuzaki et al. 2012, Phycologia 51: 74-85)及び C. serbinowii とよく似ていましたが、比較電子顕微鏡観察から、眼点の微細構造(眼点を構成する顆粒の層数)でそれぞれを識別できることが明らかになりました。また、分子系統では、本株は C. reticulata と異なる系統に位置しました。本株と C. serbinowii の系統関係は解けませんでしたが、ITS2 二次構造を比較したところ、それらが別種に相当する遺伝的差異をもつことが示唆されたことから、本株はクロロモナス属の新種であると結論付けられました。
  本新種は国立環境研究所微生物系統保存施設で長年にわたり微細藻類培養株コレクションの発展に尽力された笠井文絵博士に敬意を表し、Chloromonas kasaiae と命名されました。

Matsuzaki R., Nakada T., Hara Y. & Nozaki H. 2013.
Description of Chloromonas kasaiae sp. nov. (Volvocales, Chlorophyceae), based on comparative electron microscopy and molecular data.
Phycologia 52: 239-245.

2013年03月16日

 2013年3月15-17日に行われた日本植物分類学会第12回大会で、当研究室の特任研究員鈴木雅大博士が研究発表を行い、若手ポスター発表賞を受賞しました。

○鈴木雅大、橋本哲男、野崎久義
「日本産紅藻ベニスナゴは複数の隠蔽種を含む」

JSPS2013 peanuts senbei
受賞ポスター前にて/ 副賞の「千葉大ピーナッツせんべい」

2013年02月26日

 細胞数の増加とともにオルガネラゲノムは増大する:
 群体性ボルボックス目藻類の比較ゲノム

 群体性ボルボックス目は約2億年で多細胞化し、単細胞クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)様祖先から多細胞ボルボックス(Volvox carteri)に至る中間段階に相当する様々な生物が現存しているため、多細胞化や雌雄性の進化研究のモデル生物群と考えられています。当研究室は最近、本生物群の比較ゲノム解析を主軸とした多細胞化や雌雄性の進化の国際共同研究を開始しています。
  当研究室とカナダ・米国・南アフリカの国際共同研究チームは64細胞性の緑藻プレオドリナ(Pleodorina starrii)のミトコンドリア・色素体DNA(mtDNA, ptDNA)の完全配列を解読し、その結果の論文が2013年1月、Molecular Biology and Evolutionからオンライン出版(Advance Access)されました(1)。さらに今回、当研究室と国立遺伝学研究所 藤山研究室の共同研究によって、16細胞性のゴニウム(Gonium pectorale)のmtDNAと ptDNA配列が完全解読され、2012年2月26日にPLoS ONEより論文が出版されました(2)
 これまでのボルボックス(Volvox carteri)等の研究結果 (Smith and Lee 2010, Mol. Biol. Evol. 27: 2244-2256) も含めて考えると、細胞数の増加と共にオルガネラゲノムの非コード領域が増加しており、この現象は1個体あたりの細胞数が増加すること=集団サイズが縮小することが原因であるとするミューテーショナルハザード説(mutational-hazard hypothesis)で説明されることが、本論文では議論されています。

1. プレオドリナ オルガネラDNA完全配列解読
Smith, D. R., Hamaji, T., Olson, B. J.S.C., Durand, P. M., Ferris, P., Michod, R. E., Nozaki, H., Featherston, J. and Keeling, P. J. 2012.
Organelle genome complexity scales positively with organism size in volvocine green algae.
Mol. Biol. Evol. Advanced Access online.

2. ゴニウム オルガネラDNA完全配列解読
Hamaji, H., Smith, D. R., Noguchi, H., Toyoda, A., Suzuki, M., Kawai-Toyooka, H., Fujiyama, A., Nishii, I., Marriage, T., Olson, B. J. S. C. and Nozaki, H. 2013.
Mitochondrial and plastid genomes of the colonial green alga Gonium pectorale give insights into the origins of organelle DNA architecture within the Volvocales.
PLoS ONE 8:e57177.

2013年01月31日

 はじめて明らかになった性染色体領域 shared geneの同型配偶から卵生殖における進化:
 雌雄性の誕生はMAT3/RBの両極化以前

 平成23年度生物学科植物学コース最後の卒業研究生の平出林太郎さん (現・Imperial College London) らの論文がMolcular Biology and Evolution のearly view でオンライン出版されました。
 同型配偶から異型配偶・卵生殖への進化を分子レベルで比較研究できる系統群は生物界で唯一、群体性ボルボックス目だけでした。最近、近縁な単細胞同型配偶のクラミドモナス (Chlamydomonas reinhardtii) と2000以上の細胞からなる卵生殖ボルボックス (Volvox carteri) の性染色体領域 (MT: 性決定遺伝子が存在し、遺伝子組成と配列が両性で異なる) のゲノム解読と比較の結果、ボルボックスのMTは拡大・両極化し、15個の雌雄に特異的な遺伝子が発見されました (Ferris et al. 2010, Science)。また、ボルボックス両性のMTに存在する遺伝子 (shared genes)で、配列が著しく異なるものが数多く認められました。その一つMAT3 遺伝子はがん抑制遺伝子RBのホモログであり、クラミドモナスで細胞周期を制御するので(Umen & Goodenough 2001, Genes & Development)、ボルボックスのオスで両極化した本遺伝子ホモログが小さい雄性配偶子(精子)を数多く作り出すことに直接的に関与している可能性が示唆されました (Ferris et al. 2010)。しかし、他の群体性ボルボックス目のMAT3ホモログに関する報告はこれまでにはありませんでした。また、Charlesworth (1978, J. Theoret. Biol.) の理論的研究によればMT の様な両性で組み換えの起こらない染色体領域の細胞サイズ決定遺伝子が雌雄性の進化(同型配偶から異型配偶への)の原因になると予想されていたものの、MTに存在する遺伝子の同型配偶から異型配偶・卵生殖の包括的な比較研究はこれまで存在しませんでした。
 本研究では群体性ボルボックス目の同型配偶(Gonium, Yamagishiella)、異型配偶(Eudorina, Pleodorina)、卵生殖(Volvox africanus)の生物のヘテロタリック株の両性からMAT3ホモログの全長配列を縮重プライマー法やBACライブラリ等を用いて決定し、比較しました。その結果、V. carteri に認められたMAT3 遺伝子の両性での著しい置換は本種の系統だけに生じており、同型配偶の生物のみならず異型配偶および卵生殖のV. africanus においても認められませんでした。また、系統解析の結果、MAT3の両極化はV. carteriV. africanus と分岐した以降急激に起こったことが推測されました。MTでは遺伝子の組み換えはないと考えられますが、この結果は本群のV. carteri 以外の生物においては ”gene conversion” 等で両性の遺伝子が均一化していることを示しています。また、V. carteri で認められた両性のMAT3の両極化(Ferris et al. 2010)は、群体性ボルボックス目の系統内における雌雄性の誕生以降においてgene conversion が抑制され著しく拡大されたものと推測されました。今後、卵生殖 V. carteri より進化段階の低い異型配偶の生物の MT のゲノム解読を実施し、雌雄性の進化に直接関与した両極化した( gene conversion していない)遺伝子の探索を実施する予定です。

Hiraide, R., Kawai-Toyooka, H., Hamaji, T., Matsuzaki, R., Kawafune, K., Abe, J., Sekimoto, H., Umen, J. and Nozaki, H. 2013.
The evolution of male-female sexual dimorphism predates the gender-based divergence of the mating locus gene MAT3/RB. Mol Biol Evol (2013) 30 (5): 1038-1040.

追記: 2013年04月16日
MBE2013 30(5) cover
上記の論文がMolcular Biology and Evolution (2013) Volume 30 Issue 5の表紙に採択されました。
ボルボックスの過去に遡るタイムマシンをイメージしているそうです。

2012年11月30日

 当研究室の野崎久義准教授、博士課程2年の楊億さんと、神戸大学、ダルハウジ大学(カナダ)との共同研究の論文が11月30日付けで国際一般科学誌PLoS ONE に出版されました。
 ランブル鞭毛虫(Giardia)やマラリア原虫(Plasmodium)等の細胞内寄生虫の遺伝子の進化速度が特異的で系統解析に悪影響をもたらすことは10年前から報告されていました。しかし、最近の多くの多遺伝子系統解析ではこれが無視されており、海洋生態系で重要な位置を占めるハプト藻(Haptophyta;紅藻を二次共生色素体としたグループ)の系統的位置は最近でも出版論文によって異なっていました。本研究ではハプト藻の系統的位置に着目し、異なる2個の多遺伝子データマトリックスで細胞内寄生虫/繊毛虫(転写と翻訳が通常でない)を解析から排除する場合としない場合で比較しました。その結果、両データマトリックスでこれらを排除するとハプト藻は紅藻を二次共生色素体とした他のグループ(渦鞭毛藻、不等毛藻類等からなるクロムアルベオラータ)と高い信頼度で近縁であるという結果になりました。また、用いたデータの分子進化を調査した結果、細胞内寄生虫/繊毛虫の分子が繰り返し変化することが系統解析に悪影響することが示唆されました。
 本研究成果は紅藻由来の二次共生色素体をもつグループの系統進化の研究に大きく貢献するばかりではなく、寄生虫は医学的価値があり、分子・ゲノムデータが古くから公開されているという理由でそれらの分子データを安易に使用することへの警告になるものと思います。研究/解析する生物の生物学的特性を正しく認識すべきという当たり前のことが21世紀の系統研究にもやはり重要であることを示しています。

Nozaki H, Yang Y, Maruyama S, Suzaki T. 2012.
A case study for effects of operational taxonomic units from intracellular endoparasites and ciliates on the eukaryotic phylogeny: phylogenetic position of the haptophyta in analyses of multiple slowly evolving genes. PLoS ONE 7(11):e50827. doi:10.1371/journal.pone.0050827

2012年11月26日

 当研究室博士課程2年の川舩かおるさん、野崎久義准教授らによる、独立行政法人理化学研究所 植物科学研究センターとの共同研究の成果論文が2012年11月26日付で国際誌Protoplasmaからオンライン出版されました。
 本論文では緑藻の一種カルテリア(Carteria cerasiformis)に共生している細菌 MIDORIKO の超微細構造を、高圧凍結法・凍結置換法を用いた透過電子顕微鏡観察によって明らかにしました。MIDORIKO は分子データを用いた先行研究によって、細胞内小器官ミトコンドリアの起源に近縁である細菌のグループ、"リケッチア科"に含まれる事が分かっていましたが、本研究により、形態的にもリケッチア科の特徴を有している事が明らかになりました。リケッチア科の細菌の特徴の一つに、他の細胞内共生細菌とは異なり、宿主細胞に取込まれた際食胞膜を消失し、細胞質内にそのまま浮遊して存在する事が挙げられますが、本研究では MIDORIKO が細胞質内に直接存在している様子をとらえる事に初めて成功しました。食胞膜を失った細菌は細菌を構成する二枚の脂質二重膜に囲まれており、ミトコンドリアや葉緑体と同様の膜トポロジーを有しているため、MIDORIKOの研究によって二重膜オルガネラの起源の解明が進む事が期待されます。

Kawafune, K., Sato, M., Toyooka, K. & Nozaki, H. 2012.
Ultrastructure of the rickettsial endosymbiont “MIDORIKO” in the green alga Carteria cerasiformis as revealed by high-pressure freezing and freeze-substitution fixation. Protoplasma Published online: 23 November 2012

2012年09月4日

 2012年9月4日、当研究室特任研究員の鈴木雅大博士らによる論文が国際藻類学会誌 (Phycologia) に掲載されました。
 海産紅藻トゲナシマダラ(Gloiocladia leptophylla)は、1941年に採集されたタイプ標本と、同年に昭和天皇が採集された標本の2例しか知られていない稀産種でした。近年,鹿児島大学水産学部の寺田竜太博士が鹿児島県錦江湾の水深10~20 mで本種の生育を確認され、2010年4月に寺田博士と鈴木博士が行った調査でも、桜島袴腰の水深約15 mにて本種の生育が確認されました。
 今回の論文ではトゲナシマダラの外形、体構造、雄性配偶体、雌性配偶体、四分胞子体の詳細な形態観察を行うとともに、LSU rRNAを用いた分子系統解析を行いました。その結果、トゲナシマダラがマダラグサ属(Gloiocladia)ではなく、Leptofauchea属のメンバーであることが明らかとなり、属の組み換えが成されました。また、本種が水中で光の干渉によって青白く見えること、果皮の内側の細胞が糸状に伸長すること、四分胞子体がネマテシアを形成することなど、これまで知られていなかった様々な特徴を報告しました。北太平洋西岸におけるLeptofauchea属の生育はSuzuki et al. (2010, Phycol. Res. 58: 116-131) によるヘイゴコロ(L. rhodymenioides)の報告に次いで2例目となります。

Suzuki, M., Nozaki, H., Terada, R., Kitayama, T., Hashimoto, T. & Yoshizaki, M. 2012.
Morphology and molecular relationships of Leptofauchea leptophylla comb. nov. (Rhodymeniales, Rhodophyta) from Japan. Phycologia 51: 479-488.

トゲナシマダラの写真はこちらから (外部リンク:生き物好きの語る自然誌)
関連記事(トゲナシマダラ・ヘイゴコロのエッセイ) みちのくのハート (外部リンク:生き物好きの語る自然誌)

2012年06月28日

 2012年6月28日、当研究室のメンバーが日本微生物資源学会第19回大会で研究発表を行い、博士課程2年の川舩かおるさんがベストプレゼン賞を受賞しました。

○川舩かおる・本郷裕一・浜地貴志・野崎久義
「緑藻培養株に感染していたリケッチア科新規細胞内共生バクテリア "MIDORIKO"」

JSCC2012副賞
賞状と副賞の地酒

2012年05月18日

 当研究室の野崎久義准教授、豊岡博子博士、卒業生の井坂奈々子さんらによる論文が5月3日付で国際誌Journal of Phycologyでオンライン発表されました。また、研究成果が東京大学理学系研究科のプレスリリースに掲載され、関連記事が日本経済新聞や各社Webニュースに取り上げられました。
 詳細は以下のリンク先をご覧ください。

Nanako Isaka, Hiroko Kawai-Toyooka, Ryo Matsuzaki, Takashi Nakada, Hisayoshi Nozaki (2012)
DESCRIPTION OF TWO NEW MONOECIOUS SPECIES OF VOLVOX SECT. VOLVOX (VOLVOCACEAE, CHLOROPHYCEAE), BASED ON COMPARATIVE MORPHOLOGY AND MOLECULAR PHYLOGENY OF CULTURED MATERIAL Journal of Phycology, DOI: 10.1111/j.1529-8817.2012.01142.x (Article first published online: 3 MAY 2012)
東京大学理学系研究科 プレスリリース:ボルボックスの2新種、DNA配列データに基づき世界で初めて発見 - 「日本産ぼるぼつくすニ就テ」百年来の謎を解く -
日本経済新聞 2012年5月22日 科学技術欄
日本経済新聞Web版 2012年5月22日:ボルボックス、国内生息は新種 東京大学など
(同記事はYahoo!ニュース、ニコニコニュース、2ちゃんねるなう等にも掲載されました)

日経新聞日経Web

2012年03月24日

 本年3月23-24日、当研究室の現旧メンバーが日本植物分類学会第11回大会で研究発表を行い、野崎研OBの加藤将博士(H22年3月博士課程卒業・現神戸大学)が若手ポスター発表賞を受賞しました。

○加藤将・川井浩史・柴田葵・坂山英俊
「オオシャジクモ種内(シャジクモ目シャジクモ科)の新規系統に関する分類学的研究」

2012年02月22日

 当研究室博士課程1年の川舩かおるさんらによる論文が、2月21日付で国際誌PLoS ONEで発表されました。内容は東京大学理学系研究科のプレスリリースに掲載され、関連記事が時事通信社などのWebニュースに取り上げられました。
 詳細は以下のリンク先をご覧ください。

Kaoru Kawafune, Yuichi Hongoh, Takashi Hamaji, Hisayoshi Nozaki. (2012)
Molecular Identification of Rickettsial Endosymbionts in the Non-Phagotrophic Volvocalean Green Algae. PLoS ONE 7(2): e31749. doi:10.1371/journal.pone.0031749
東京大学理学系研究科 プレスリリース:はじめて分子同定された植物細胞内感染性リケッチア - 宿主共存性リケッチア科バクテリア "MIDORIKO" の発見 -
時事通信社 時事ドットコム:植物細胞にも「リケッチア」=共生細菌、緑藻で発見-感染症研究に応用期待・東大
(同記事は化学工業日報、Yahoo!ニュース、gooニュース、ニコニコニュース等にも掲載されました)

2012年04月05日 追記
 上記で紹介している論文が、PLoS HUBS に掲載されました。

2012年01月31日

 当研究室博士課程1年の松崎令さんらによる論文が1月31日付の国際藻類学会誌 (Phycologia) に掲載されました。
 この論文では、種の境界に問題のあった微細緑藻クロロモナス属のタイプ種 “Chloromonas reticulata” の複数の培養株に対し、光学・電子顕微鏡による比較形態解析と複数の遺伝子配列を用いた系統解析を行いました。その結果、細胞形態、眼点と葉緑体の微細構造、及び高解像度の系統樹から、“C. reticulata” が狭義の C. reticulataC. chlorococcoidesC. rosaeC. typhlos の4種からなることを明らかにしました。また、核 ribosomal DNA internal transcribed spacer 2 (ITS) 二次構造にみられる差も本研究の種分類を支持し、電子顕微鏡レベルの比較形態解析と解像度の高い分子系統解析が、クロロモナス属の種分類に極めて有効であることを示しました。
 本論文は Phycologia の 2012年第51巻第1号のFeatured Article に選出されました。さらに特例のOpen Access Content となり、一定期間無料公開されました。

Matsuzaki, R., Hara, Y. & Nozaki, H. 2012. A taxonomic revision of Chloromonas reticulata (Volvocales, Chlorophyceae), the type species of the genus Chloromonas, based on multigene phylogeny and comparative light and electron microscopy. Phycologia 51: 74-85.

2011年12月04日

第一回国際ボルボックス会議に参加・野崎研OBが口頭発表賞受賞!
 2011年12月1日から4日の間アリゾナ大学で開催されたFirst International Volvox Conference (第一回国際ボルボックス会議)に、野崎研のメンバーが参加しました。本会議で唯一の undergraduate student(大学生)であった、当研究室の卒業研究生 平出林太郎さんが立派に口頭発表し、質疑応答を行いました。また、昨年度当研究室で博士課程を終了した浜地貴志さん(現学術振興会PD研究員、京都大学)は当研究室との共闘研究の成果を発表し、Best Student/Postdoc Talkを受賞しました。
 博士課程の楊億さん、野崎久義准教授の口頭発表の詳細と、「雪降るアリゾナの砂漠」での会議の様子は会議のウェブサイトからご覧下さい。

MAT3 DIVERGENCE AFTER THE EVOLUTION OF ANISOGAMY IN THE COLONIAL VOLVOCALES
○Rintaro Hiraide, Hiroko Kawai-Toyooka, Takashi Hamaji, James Umen and Hisayoshi Nozaki

MATING TYPE LOCUS OF GONIUM PECTORALE
○Takashi Hamaji, Yuko Mogi, Patrick Ferris, James Umen, Ichiro Nishii, Yoshiki Nishimura and Hisayoshi Nozaki

111204-1
受賞に大喜びの野崎研OB 浜地貴志さん

2011年09月16日

 当研究室の川舩かおるさんと野崎久義准教授が、2011年度日本植物形態学会第23回大会においてポスター賞を受賞致しました。発表者の川舩さんは、学会直前まで、『レイアウトの美しさ』と、『いかに人に伝えるか』を追求しておりました。ポスターのタイトルは以下の通りです。

川舩かおる・野崎久義
「細胞内バクテリアを保有する緑藻カルテリアとその近縁種における比較形態学的観察」

2011年09月07日

「緑アメーバも昔は紅かった」
 当研究室博士課程1年の楊億さんの論文が9月7日に国際一般科学誌 BMC Research Notesに出版されました。
この論文では、PRK (Phosphoribulokinase) 遺伝子を多くの藻類で系統解析しています。その結果、緑色の二次共生色素体を持つ2系統(ミドリムシ植物門とクロララクニオン植物門 -緑色のアメーバ細胞の生物-)において、PRK 遺伝子の由来が緑藻ではなく、ミドリムシ植物門では不等毛藻(紅色2次共生色素体をもつ褐藻類や珪藻類を含む)からの、またクロララクニオン植物門は紅藻からの、HGT(遺伝子水平伝達)に由来していたことを明らかにしました。今回の解析結果は、ミドリムシ植物の過去における紅色色素体の獲得の仮説(Maruyama et al. 2011, BMC Evol. Biol. 11: 紹介記事はこちら)を支持し、さらにクロララクニオン藻で初めて過去の紅藻の細胞内共生を示唆しました。すなわち、クロララクニオン植物(緑のアメーバ)も昔は紅かったかも知れません。
このように、真核植物が現在の色素体を獲得する以前に全く異なる色素体を持っていたことが、最近の進化生物学の研究によって次々と明らかになっています。
Yi Yang, Shinichiro Maruyama, Hiroyuki Sekimoto, Hidetoshi Sakayama, Hisayoshi Nozaki
An extended phylogenetic analysis reveals ancient origin of "non-green" phosphoribulokinase genes from two lineages of "green" secondary photosynthetic eukaryotes: Euglenophyta and Chlorarachniophyta.
BMC Research Notes 2011, 4:330.

2011年04月29日

 本年3月に修士課程を修了した瀬戸東有香さんの論文が4月29日にPLoS ONEに出版されました。
この論文は元修士課程学生の葉山真歩子さんが最近記載した新種 Gonium maiaprilis の特徴を生かし、緑藻ボルボックス目で初めて、生殖的隔離のほとんどない (遺伝的にあまり異ならない) 野生株を用いて、色素体DNA の遺伝を調査することに成功しました。その結果、自然界では色素体DNA の片親遺伝の例外はあまり起こらない可能性が示唆されました。
Setohigashi, Y., Hamaji, T., Hayama, M., Matsuzaki, R. and Nozaki, H. 2011.
Uniparental Inheritance of chloroplast DNA is strict in the isogamous volvocalean Gonium.
PLoS ONE 6: e19545.

Hayama, M., Nakada, T., Hamaji, T. and Nozaki, H. 2010.
Morphology, molecular phylogeny and taxonomy of Gonium maiaprilis sp. nov. (Goniaceae, Chlorophyta) from Japan.
Phycologia 49: 221-234.

2011年04月20日

 当研究室の野崎久義准教授と当研究室OBの丸山真一朗博士(現在カナダ、ダルハウジー大学博士研究員)の共同研究が国際誌BMC Evolutionary Biologyで発表され、その内容が東京大学理学系研究科のプレスリリースに掲載されました。また、関連記事が4月21日付の朝日小学生新聞1面に掲載されました。
 詳細は以下のリンク先をご覧ください。
 BMC Evolutionary Biology 当該記事:Eukaryote-to-eukaryote gene transfer gives rise to genome mosaicism in euglenids.
 東京大学理学系研究科 プレスリリース:むかしむかし、ミドリムシは紅かった? - 遺伝子水平伝達がもたらした光合成生物のゲノム進化 -

2011年05月10日 追記
 上記で紹介している、研究室OB 丸山真一朗博士の論文、「ミドリムシは紅かった?」が、掲載誌であるBMC Evolutionary Biology の30日間アクセスランキング(Most viewd)10位以内にランクインしました。
強敵ひしめくランキング争いでいつまで生き残れるか、今後が楽しみです。

2011年03月16日

 当研究室の松崎令さんが2010年度理学系研究科研究奨励賞を受賞しました。賞状は3月24日の学位授与式において授与されます。「理学系研究科研究奨励賞」は理学系研究科において、研究に最も優れた修士・博士修了生に授与されます。詳細は東京大学理学部・理学系研究科—研究奨励賞をご覧下さい。

2011年02月18日

 当研究室の野崎久義准教授の研究が、2011年2月18日付の日本経済新聞(夕刊)「らしさの科学—性別とは」に掲載されました。

2010年06月02日

2010年度日本植物学会若手奨励賞:当研究室からダブル受賞

 当研究室で平成19年度博士課程を終了した仲田崇志博士(現慶応義塾大学先端生命科学研究所、特任助教)と当研究室所属の丸山真一朗博士(学術振興会PD研究員、カナダ留学中)が「2010年度日本植物学会若手奨励賞」を受賞することが決定しました。受賞式と受賞講演は本年9月9日(木)~11日(土)、中部大学(春日井市)で開催される日本植物学会第74回大会で行われる予定です。「日本植物学会若手奨励賞」は優れた研究を行う満32歳未満の若手研究者に贈られます。受賞内容に関しては日本植物学会のホームページ(http://bsj.or.jp/osirase/osirase_open.php?shu=1&did=326)をご覧下さい。

仲田崇志
「単細胞性オオヒゲマワリ目(緑藻植物門緑藻綱)の多層的分類研究」
丸山真一朗
「下等植物および原生生物におけるゲノム進化と葉緑体の起源」

2010年05月28日

 当研究室と理研植物科学研究センター植物免疫研究グループとの共同研究の成果がScience誌に発表されました。
 この論文では、単子葉類の宿主植物から双子葉類の寄生植物へと核遺伝子が水平伝達したことがゲノム進化解析により初めて示されました。アフリカ地域で甚大な被害をもたらしている寄生植物の進化史を理解し、食糧・環境問題解決への糸口がつかめるものと期待されます。
Yoshida S, Maruyama S, Nozaki H, Shirasu K. (2010)
Horizontal gene transfer by the parasitic plant Striga hermonthica. Science. 328:1128.
理研プレスリリース:イネ科の宿主から寄生植物へ、核内遺伝子が水平伝播する現象を発見 -寄生植物が、栄養源に加えて遺伝子も宿主植物から獲得-

2010年04月19日

 当研究室の外国人客員共同研究員であったPatrick Ferris博士(The Salk Institute for Biological Studies)との共同研究の論文が以下のように発表され、プレスリリースされました。

Patrick Ferris, Bradley J. S. C. Olson, Peter L. De Hoff, Stephen Douglass, David Casero, Simon Prochnik, Sa Geng, Rhitu Rai, Jane Grimwood, Jeremy Schmutz, Ichiro Nishii, Takashi Hamaji, Hisayoshi Nozaki, Matteo Pellegrini, James G. Umen,
Evolution of an Expanded Sex-Determining Locus in Volvox
Science (2010) 328:351-354
(Abstract) Evolution of an Expanded Sex-Determining Locus in Volvox

(東京大学)   ゲノム解読がはじめて明かすメスとオスへの進化 - メスらしさのはじまり"HIBOTAN"遺伝子群の発見 -
(NHK)     オスとメス別に進化 証拠発見(リンク切れ)
(読売新聞)   生物の雌雄は最初から、「雌が先」覆す発見(リンク切れ)
(日本経済新聞) 「メスらしさ」決める遺伝子を特定、東大などの研究グループ(リンク切れ)

2010年04月05日

当研究室からダブル受賞:日本植物分類学会奨励賞・学会賞

 当研究室で平成19年度博士課程を終了した仲田崇志博士(現慶応義塾大学先端生命研究所、特任助教)が「日本植物分類学会奨励賞」、野崎久義准教授が「日本植物分類学会賞」を本年3月27日に愛知教育大学で開催された日本植物分類学会において受賞し、それぞれ受賞講演がありました。「日本植物分類学会奨励賞」は満38歳以下で優れた研究業績をあげた将来有望な研究者に、日本植物分類学会賞」は植物分類学および日本植物分類学会の発展に特に顕著な貢献が認められた者に贈られます。
 仲田崇志博士は、緑藻類オオヒゲマワリ目(ボルボックス目)の混乱していた種以上の分類体系をより客観的で自然なものにしようと、当研究室で修士課程から研究を開始しました。培養株を基本とする比較形態と分子系統を組み合わせ、熟知した植物国際命名規約を基に、新種や新属を続々と発表しています。また、オオヒゲマワリ目の属を超えた分類の混乱を解決するためにPhyloCode を基に本目全体を系統的に整理し、命名するという微細藻類分野では画期的な論文を発表し、高い評価を得ています。既に筆頭の英文原著論文(審査員付き)は10を超えるという高い研究能力を示しています。(http://www2.tba.t-com.ne.jp/nakada/takashi/profile.html)今後も微細藻類をはじめとする全生物の分類学的研究(本人は500歳まで生きて全生物の分類を制覇すると宣言しています)で重要な研究成果をあげることが期待されます。
 さらに、進化生物学の普及・啓蒙のために独自のウェブサイト「きまぐれ生物学」を大学院生時代から執筆し続けており、これも今回の受賞の理由となりました。
 野崎准教授の受賞理由は理学系研究科のウェブサイトをご覧下さい。

2010年3月18日

最近、続々と以下のような野崎研究室関係の論文が出版されました。

1. 修士課程卒業の村元京平さんの修士論文の一部で、日本産の氷雪緑藻類で従来Carteria miwaeとされてきた種がCarteria属ではでなかったという論文です。
Muramoto, K., Nakada, T., Shitara, T., Hara, Y. and Nozaki, H. 2010.
Re-examination of the snow algal species Chloromonas miwae (Fukushima) Muramoto et al., comb. nov. (Volvocales, Chlorophyceae) from Japan, based on molecular phylogeny and cultured material.
Eur. J. Phycol. 45: 27-37.
http://www.informaworld.com/smpp/content~db=all~content=a919785894

2. 2010年度現在博士課程の浜地貴志さんのゴニウムの性特異的遺伝子に関する論文です。
Hamaji, T., Ferris, P., Nishii, I. and H. Nozaki, H. 2009.
Identification of the mating type minus specific gene MTD1 from Gonium pectorale (Volvocales, Chlorophyta).
J. Phycol. 45: 1310-1314.
http://www3.interscience.wiley.com/journal/122612693/abstract

3. 野崎久義准教授による、グロエオモナス(ナマズミドリモ)という、鞭毛がなまずの鬚のように離れている緑藻の微細構造と系統の研究です。
Nozaki, H., Nakada, T. and Watanabe, S. 2010.
Evolutionary origin of Gloeomonas (Volvocales, Chlorophyceae), based on ultrastructure of chloroplasts and molecular phylogeny.
J. Phycol. 46: 195-201.
http://www3.interscience.wiley.com/journal/123209179/abstract

4. 博士課程卒業の仲田崇志さんのヤリミドリ属の新種記載の論文です。第一著者の審査員付き英文原著論文はこれで11報目になります。
Nakada, T., Soga, T., Masaru M. and Nozaki, H. 2010.
Chlorogonium complexum sp. nov. (Volvocales, Chlorophyceae), and morphological evolution of Chlorogonium..
Eur. J. Phycol. 45: 95-107.
http://www.informaworld.com/smpp/content~db=all~content=a919783899

2010年01月18日

Delwiche 先生が再び野崎研訪問!公開セミナー実施!!

 2008年11月に「国際シンポジウム Bacteria made Organelles made Eukaryotic Cells」に招待講演者として来日し、野崎研究室に訪問した米国メリーランド大学(University of Maryland)のCharles F. Delwiche 准教授が2010年1月に野崎研究室に再び戻って来ました。Delwiche 先生は緑藻類、特に車軸藻類の系統進化研究の第一人者で、今回の来日で Delwiche 准教授は東京大学理学部2号館を訪問し、緑藻、特に車軸藻の分類・系統進化・ゲノムに関する研究打ち合わせを野崎研究室のメンバーと実施しました。1月18日(月)には東京大学理学部2号館で公開のセミナー講演(第43回進化多様性生物学セミナー)を開催されました。
 以下、当研究室院生の感想です。
「私はDeiwiche先生の多くの論文を教科書として学んでいます。
その先生から直接ご指導いただけて誠に光栄でしたし、これからの励みになりました。」

2009年12月19日

 当研究室の丸山らによる論文が Molecular Biology and Evolution 誌オンライン版に掲載されました。
 遺伝子情報をタンパク質 へと翻訳する上で主要な役割を果たす転移RNA(tRNA)の 遺伝子には様々な種類のものがありますが、遺伝子の前半と後半が逆順 になっていて、転写された後に正しい順序に置き換えられる“逆順 tRNA”遺伝子(permuted tRNA)という奇妙な遺伝子の存在が紅藻の一種で知られていました。この論文では、この非常に特殊な例だと考えられていた逆順tRNAが、実は植物に広く保存された因子であること、またヌクレオモルフと呼ばれる痕跡的な細胞核のゲノムにも存在することを示しています。そして、真核生物の進化の過程で、組み換えやサイズ縮小などによりゲノム(染色体)が複雑に再構築される際、このような“逆順”遺伝子を作ることで効率的にゲノム構造を変化させてきたのではないかという説を提唱しています。

Maruyama S, Sugahara J, Kanai A, Nozaki H.
Permuted tRNA genes in the nuclear and nucleomorph genomes of photosynthetic eukaryotes. Mol Biol Evol. 2009; doi: 10.1093/molbev/msp313

2009年11月29日

 当研究室の野崎らによる論文が Molecular Phylogenetics and Evolution 誌に掲載されました。
この論文では、寄生虫等の遺伝子進化が特異な生物を排除したゲノムデータ等の大規模な系統解析をスーパーコンピュータで実施した結果、黄色植物(不等毛植物やハプト植物)は緑色植物と近縁であり、元々は緑色植物のような色素体をもっていた可能性を明らかにしました。これが、最近続々と報告される黄色植物のもつ緑色植物型遺伝子(例えば Moustafa et al. 2009, Science 324: 1724-1726)の原因であると考えられます。真核生物全体の系統関係、特に灰色藻類・緑色植物・ハプト藻類の関係に注目した今回の解析は、一次共生色素体を持つ植物(緑色植物・紅藻・灰色藻)はこれまで考えられていたよりもずっと岐が深いことが示され、これら「植物」は非常に多様な真核生物を含む一大系統群(“超”植物界)であるという我々の従来の仮説(例えば Nozaki 2005, J. Plant Res. 118: 247-255)を補強する新たな結果が得られました。

Nozaki H, Maruyama S, Matsuzaki M, Nakada T, Kato S, Misawa K.
Phylogenetic positions of Glaucophyta, green plants (Archaeplastida) and Haptophyta (Chromalveolata) as deduced from slowly evolving nuclear genes. Mol Phylogenet Evol. (2009) 53:872-80.

2009年9月7日

 当研究室の丸山らによる論文(Maruyama et al. BMC Evol Biol (2009) 9:197.)がBMC Evolutionary Biology誌の"Most viewed paper in past 30 days"上位10位にランクインしました。

2009年7月7日

 当研究室の丸山真一朗が日本進化原生生物研究会(JSEP)第4回研究会にて Best Presentation Award を受賞しました。

 丸山真一朗、野崎久義:ミドリムシはかつて紅かった?緑色系二次共生藻における紅色系色素体型遺伝子の起源, 日本進化原生生物研究会 (JSEP) 4th conference 宮城教育大学 2009 Jul 4-5.

2009年3月31日

 当研究室の群体性ボルボックス目の性の進化に関する研究内容に関する一般向けの記事が、以下のNikonのWebサイトに掲載されました。
 和文 「生命と光 男になる遺伝子」
 英文 "Life and Light: The male gene"
(2009年03月31日。文責:野崎)

2008年06月25日

 昨年度学位を取得した仲田崇志(現・慶應義塾大学)らによる論文が Molecular Phylogenetics and Evolutionの 2008 年 07 月号に掲載されました。
 緑藻綱オオヒゲマワリ目(Volvocales)の組成と系統関係を明らかにするために,データベース中の18S rRNA 配列を網羅的に解析し,400 配列以上の系統関係を推定した研究です。この過程で 18S rRNAの大規模かつ正確なアラインメントを作成し,また多数のキメラ配列(誤って複数の生物の配列を結合した配列)がデータベースに登録されていることを見つけました。オオヒゲマワリ目の内部分類については現在も問題が多く,形態に基づく分類体系の構築にはまだ年月を要すると考えられているため,本論文中では PhyloCode に従った,系統関係に基づく分類も提唱しています。(2008年06月25日。文責:仲田)
 Nakada, T., Misawa, K. & Nozaki, H. Molecular systematics of Volvocales (Chlorophyceae, Chlorophyta) based on exhaustive 18SrRNA phylogenetic analyses. Mol. Phyl. Evol. 48,281-291 (2008).

2008年05月19日

 当研究室の丸山らによる論文がBMC Evolutionary Biology誌に掲載されました。
 この論文では、色素体を持たない「無色」の原生生物が持つシアノバクテリア型の遺伝子(gndという遺伝子)が、太古の一次共生または真核生物が多様化する過程のかなり初期に起こった水平伝達によって獲得されたことを分子系統学的に示しています。こうした遺伝子の解析は、葉緑体の一次共生が真核生物進化のどの段階で起こったのかを考える上で重要な手掛かりになると考えられます。

 Maruyama S, Misawa K, Iseki M, Watanabe M, Nozaki H. Origins of a cyanobacterial 6-phosphogluconate dehydrogenase in plastid-lacking eukaryotes. BMC Evol. Biol. (2008) 8:151

2008年04月17日

当研究室に在籍する丸山、加藤の二名が、それぞれ学会のポスター賞を受賞しました。

 国際プロティスト生物学シンポジウム2008 最優秀ポスター賞受賞: 丸山 真一朗
 Shinichiro Maruyama, Kazuharu Misawa, Mineo Iseki, Masakatsu Watanabe and Hisayoshi Nozaki, Origins of a cyanobacterial 6-phosphogluconate dehydrogenase in plastid-lacking eukaryotes. International Symposium on Protist Biology: Cellular Functions, Evolution, and Environmental Impact; University of Tsukuba, Tsukuba, Japan, 25-26 Mar. 2008.

 日本植物分類学会大会発表賞(ポスター部門): 加藤 将
 加藤将,坂山英俊,三沢計治,佐野郷美,笠井文絵,渡邉信,田中次郎,野崎久義 複数の核DNA領域による日本産 Chara braunii (シャジクモ目)の種内解析 日本植物分類学会第七回大会,首都大学東京,八王子,東京,20-23 Mar. 2008.

2008年02月12日

 以前に当研究室に所属していた高橋文雄(現・東北大学)らよる論文が Journal of Phycology の 2007 年 12 月号に掲載されました。
 緑色の二次共生藻であるユーグレナ藻類とクロララクニオン藻類の色素体の由来を調べた研究です。
 色素体にコードされた遺伝子では一次共生色素体と二次共生色素体で進化速度に違いが生じるおそれがあるため、核にコードされた色素体遺伝子である psbO が調べられました。系統解析と輸送ペプチドの特徴に基づき、ユーグレナ藻類の色素体は原始的な緑色植物で,クロララクニオン藻類の色素体はおそらくテトラセルミス(Tetraselmis)の仲間から進化したと推測されました。(2008年02月12日。文責:仲田)。
 Takahashi, F. et al.. Origins of the secondary plastids of Euglenophyta and Chlorarachniophyta as revialed by an analysis of the plastid-targetting, nuclear-encoded gene psbO. J. Phycol. 43, 1302-1309 (2007).

2007年10月16日

 当研究室の仲田崇志と野崎久義准教授による論文が植物研究雑誌の 2007 年 8 月号に掲載されました。
 コナミドリムシ属(Chlamydomonas)という微細藻の仲間 2 種(チョビコナミドリ:C. perpusilla とアリスガワコナミドリ:C. pumilio)を光学顕微鏡観察の結果と共に日本新産種として報告し、両種の分子系統の結果も初めて紹介しています。コナミドリムシ属は数百種が含まれる巨大なグループですが,日本産のメンバーは 30 種以下しか報告されておらず、今後の研究が必要です(文責:仲田)。
 Nakada, T. & Nozaki, H. Two species of Chlamydomonas (Volvocales, Chlorophyceae) new to Japan. J. Jpn. Bot. 82, 179-189 (2007).

2007年09月11日

 当研究室の野崎久義准教授(代表受賞者)らによる論文が日本植物形態学会第19回総会・大会(2007年9月6日)において「平瀬賞」を受賞しました。受賞が決定した論文は以下の通りです。
 Nozaki,H., Mori,T., Misumi,O., Matsunaga,S. & Kuroiwa,T. Males evolved from the dominant isogametic mating type. Curr. Biol. 16, R1018-R1020 (2006).

2007年09月03日

 当研究室の仲田崇志が日本進化学会(2007:09月01日)において,教育啓蒙賞を受賞しました。受賞タイトルは以下の通りです。

 「ウェブサイト〈きまぐれ生物学〉の運営と進化研究の紹介・啓蒙活動」

2007年08月22日

 当研究室の加藤将がアメリカ藻類学会/国際原生生物学会合同学会(PSA/ISOP 2007:8月05~11日)において、PSA Student Poster Award を受賞しました。受賞した発表演題と著者は以下の通りです。

 演題:Analyses of the ubiquitous species Chara braunii (Charales) in Japan, based on the morphology, chloroplast and nuclear DNA sequences.
 著者:Syou Kato, Hidetoshi Sakayama, Kazuharu Misawa, Satomi Sano, Fumie Kasai, Makoto M. Watanabe, Jiro Tanaka and Hisayoshi Nozaki.

2007年08月22日

 当研究室の丸山真一朗ら(共著)による論文が 2007年度JPR論文賞に選ばれました。
 授賞式は日本植物学会第71回大会にて行われます(09月08日)。受賞が決定した論文は以下の通りです。
 Iwamoto, A., Satoh, D., Furutani, M., Maruyama, S., Ohba, H. & Sugiyama, M. Insight into the basis of root growth in Arabidopsis thaliana provided by a simple mathematical model. J. Plant Res. 119, 85-93 (2006).

2007年08月03日

 当研究室の野崎久義准教授らによる論文が Molecular Biology and Evolution の 8 月号に掲載されました(文責:仲田)。
 Nozaki, H., Iseki, M., Hasegawa, M., Misawa, K., Nakada, T., Sasaki, N. & Watanabe, M. Phylogeny of primary photosynthetic eukaryotes as deduced from slowly evolving nuclear genes. Mol. Biol. Evol. 24, 1592-1595 (2007).
 オンライン出版時の記事はこちら

2007年07月31日

 当研究室の丸山と野崎准教授による論文が Journal of Eukaryotic Microbiology に掲載されました。
 Naegleria gruberi というアメーバ鞭毛虫(近縁な N. fowleri は病原性がある)においては、rDNA が染色体ではなく,環状のプラスミドにコードされていることが知られていました。本論文ではこの環状プラスミドの全長配列を決定し,同時にこのプラスミドの細胞内での局在を観察し、rDNA プラスミドが核内の特定の領域に局在している、おそらくは組織化されていることを明らかにしました。このようなプラスミドは,将来遺伝子導入系として利用できる可能性があります(文責:仲田)。
 Maruyama, S. & Nozaki, H. Sequence and intracellular location of the extrachromosomal rDNA plasmid of the amoebo-flagellate Naegleria gruberi. J. Eukaryot. Microbiol. 54, 333-337 (2007).

2007年07月10日

 当研究室の野崎久義准教授らによる論文が BMC Biology(オンライン版)に掲載されました。
 Cyanidioschyzon merolae(シゾン)は温泉性の単細胞紅藻で、極めて単純な細胞構造をしていることからモデル生物として研究されています。本種についてはは 2004 年に真核藻類として初めてゲノム配列が報告されていますが、実は 99.98% が解読された状態でした。他の真核生物のゲノム解読においても解析が難しい領域が放置されており,完全に解読された例はありませんでした。
 今回,シゾンにおいて初めて、染色体の末端から末端まで、また核、ミトコンドリア、色素体の 3 ゲノム全てについて 1 塩基余さず 100% の配列が決定されました。このことによって、シゾンが真核生物の中では最小のヒストン遺伝子クラスターを持つことやトランスポゾンの数が非常に少ないこと、独特のテロメア構造が全ての染色体に存在することなどが疑いなく示されました(文責:仲田)。
 Nozaki, H., Takano, H., Misumi, O., Terasawa, K., Matsuzaki, M., Maruyama, S., Nishida, K., Yagisawa, F., Yoshida, Y., Fujiwara, T., Takio, S., Tamura, K., Chung, S. J., Nakamura, S., Kuroiwa, H., Tanaka, K., Sato, N. & Kuroiwa, T. A 100%-complete sequence reveals unusually simple genomic features in the hot-spring red alga Cyanidioschyzon merolae. BMC Biol. 5, 28 (2007).

 東京大学大学院理学系研究科・理学部 プレスリリース:世界で初めて真核生物のゲノム配列情報の100%完全解読に成功 - 日本の研究グループのDNA塩基配列決定が世界のゲノム研究に先立つ -
 報道など:毎日新聞時事通信

2007年06月18日

 当研究室の野崎久義准教授らによる論文が Molecular Biology and Evolution のオンライン版に掲載されました。
 色素体(葉緑体など)はもともと細胞内に共生した別の生物に由来しています。そしてシアノバクテリアに由来する色素体を持つ植物は一次共生植物と呼ばれています(対して一次共生植物に由来する色素体を持つ植物は二次共生植物と呼ばれます)。2005 年に Rodríguez-Ezpeleta et al.. (2005) は 143 遺伝子を用いた大規模な系統解析を行い、一次共生植物は定説どおり単系統群であると主張しました。ところがこのデータには進化速度が速すぎるものが多数含まれていて系統解析に悪影響を及ぼす可能性が考えられました。
 そこで当研究では、より適切な 19 遺伝子を選び直して系統解析を行ったところ、一次共生植物は単系統群とはならず、一部の植物が光合成を行わない原生動物と近縁であることが示されました。このことは同時に、多くの原生動物が色素体を失った一次共生「植物」である可能性を示唆しています。この結果をもとに、植物の範囲を一次共生「植物」の子孫である原生動物にも拡大することを提案しています(Nozaki et al.., 2003 でも 4 遺伝子のみの解析から同様の結論を導いています)。(文責:仲田)
 Nozaki, H., Iseki, M., Hasegawa, M., Misawa, K., Nakada, T., Sasaki, N. & Watanabe, M. Phylogeny of primary photosynthetic eukaryotes as deduced from slowly evolving nuclear genes. Mol. Biol. Evol. doi:10.1093/molbev/msm091 in press.
東京大学大学院理学系研究科・理学部 プレスリリース:植物の出生20億年の秘密を解き明かす - "超"植物界 ("Super" Plant Kingdom) の復権 -
 報道:東京大学新聞

2007年05月18日

 当研究室の仲田らによる論文が European Journal of Phycology の 2007 年 5 月号に掲載されました。
 ヤリミドリ属(Chlorogonium) に分類される 3 種の藻類(C. euchlorumC. elongatum および C. capillatum)では、核にコードされた 18S rRNA 遺伝子ではそれぞれが単系統群とならず、それぞれの種の独立性に疑問がもたれていました。
 今回の研究では、3 種の独立性を検証するため 18S rRNA 遺伝子の系統解析を見直しました。その結果、これまでの 18S rRNA の結果は培養株の取り違えや誤同定に基づいていて、これらを修正した解析では 3 種がそれぞれ独立した種であることが裏付けられました。(文責:仲田)

Nakada, T. & Nozaki, H. Re-evaluation of three Chlorogonium (Volvocales, Chlorophyceae) species based on 18S ribosomal RNA gene phylogeny. Eur. J. Phycol. 42, 177-182 (2007).

2007年03月30日

 当研究室の仲田らによる論文が Journal of Phycology の 2007 年 4 月号に掲載されました。
 Hafniomonas という、単細胞 4 鞭毛性のボルボックス目藻類の分類の論文です。Hafniomonas 属はボルボックス目の中でも比較的に初期に分岐した系統群と見られますが、観察例が少なく、培養株に基づいた分類が遅れていました。この論文では新規株 6 株と、国立環境研究所に保存されていた 2 株の微細構造と分子系統などを比較し、種レベルの分類を見直しました。タイプ種の H. reticulata の再発見、新種 H. laevisH. turbinea などを報告しています。(文責:仲田)
 Nakada, T., Suda, S. & Nozaki, H. A taxonomic study of Hafniomonas (Chlorophyceae) based on a comparative examination of cultured material. J. Phycol. 43, 397-411 (2007).

2006年12月19日

 当研究室の野崎久義准教授らの論文が Current Biology の 2006 年 12 月 19 日号に掲載されました。
 ボルボックス科 Pleodorina starrii(10 月に新種記載)から、性決定に関与すると見られる MID 遺伝子を見つけたとの報告です。ボルボックス科では同形配偶から異形配偶、卵生殖への進化が見られるため、有性生殖の進化の研究に最適な分類群と考えられます。なお、この遺伝子は通称「OTOKOGI(侠)」と名づけられました。(文責:仲田)
 Nozaki, H., Mori, T., Misumi, O., Matsunaga, S. & Kuroiwa, T. Males evolved from the dominant isogametic mating type. Curr. Biol. 16, R1018-R1020 (2006).

 東京大学大学院理学系研究科・理学部 プレスリリース:はじめて明らかにされた"メスとオス"のはじまり - オス特異的遺伝子"OTOKOGI"の発見 -
 報道など(掲載時順):読売新聞、産経新聞、時事通信