精子などの鞭毛軸糸内では,ダイニンの活性の制御にカルシウムとタンパク質のリン酸化が関っているが,これまでのところそれらの作用機序はまだよくわかっていない.
真行寺研究室では,鞭毛を分解せずに滑り速度を解析する技術を開発し,その手法を用いて,これらの作用機構の解明を進めている.
これまでに,鞭毛の中心に位置する中心小管が,ダイニンの活性を抑制すること,この抑制がカルシウム存在下で最大になることを最近発見した (Nakano et al., 2003). また,ウニ精子鞭毛ダイニンの中の外腕のダイニンの運動活性の制御にリン酸化と脱リン酸化が関与することを見いだした (Yoshimura et al., 2007).
現在,カルシウムおよびリン酸化・脱リン酸化のシグナルがどのようにしてダイニンの運動活性を制御するのか,また,力学シグナルと化学シグナルとはどのように関連するのかに注目して解析を進めている.
図3. ダイニンの運動活性は,中心小管からのシグナルにより制御される.