東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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目 的

拠点リーダー 宮下 保司

 生命科学は目覚ましい進化・発展を続けています。生命科学研究が各論の寄せ集めであった半世紀前とは異なり、脳・神経生物学、腫瘍生物学、免疫学、発生学など生物個体を対象とする研究や、細胞分裂・シグナル・遺伝子発現の素過程を解明する分子レベルの研究が、遺伝子、タンパク質、細胞、情報などのキーワードで互いに結びつきつつあります。こうした高次生命活動の基盤解明を目指している東京大学の生命科学・基礎医学研究者達が、「生体シグナルネットワーク解析」の切り口から結集して明日の「統合生命学」に向けた教育研究の拠点――本グローバルCOE拠点――の形成を構想しました。先端的方法論を学横断的に用いて融合的新分野・新技術を創出し世界最高レベルの生命科学の発信拠点になると同時に、我が国の生命科学研究の更なる発展を担う次世代の国際的リーダーを養成することをめざします。

 「統合生命学」では、酵母から霊長類・ヒトに至る生命の階層を貫く統合的階層的原理を理解するために、互いにオーバーラップしつつも異なる生命現象の4つの側面――「生命の形作り」、「生命の営み」、「生命の引継ぎ」、「生命システムの異常」――からその本質に迫ります。

生命の形作り
一個の受精卵から形態・器官の形成さらに個体が形成される過程の基礎となる生体シグナルに注目し、多細胞生物の形作りと機能発現の基礎となる発生・分化のメカニズムを統合的に理解します。

生命の営み
生命体が外界や他者からの働きかけに対して調和した応答を行う基礎となる脳神経系や免疫系などの働きを、階層的なシグナルネットワークの観点から統合的に理解します。

生命の引き継ぎ
複雑で精緻な生命体の再生産活動(細胞分裂、無性生殖、有性生殖など)を生体シグナルの観点から理解します。

生命システムの異常
生体シグナルネットワークの破綻は高次生命活動に破綻をきたし癌や自己免疫疾患等の疾患につながります。この病態・病理の機構を理解します。

東京大学の3つの部局、すなわち大学院医学系研究科・大学院理学系研究科・分子細胞生物学研究所から世界最高水準の研究者群を組織した本拠点は、大学院生・若手研究者が、この新しい広範な研究教育環境を柔軟に利用して成長する人材養成拠点でもあります(教育プログラム等はこちらを参照ください)。COE学生委員会によって企画立案されるリトリートを核として拠点内における共同作業を進めると共に、国外大学・研究所のリトリートやトレーニングプログラムとの短期・中期の双方向性の交流を通じて若手研究者・大学院生の研究成果を広く世界に発信し、高い研究意欲と国際性を身につけた若手人材の育成に努めます。

グローバルCOE「生体シグナルを基盤とする統合生命学」
拠点リーダー 宮下 保司