矢野 環先生(東北大学大学院薬学研究科)
我々人間を含む生物は、常に多くの病原体に取り囲まれて暮らしていても、病原体の体内への侵入を感知し排除する「免疫」というシステムにより感染を免れている。病原体の種類は膨大であり、初めて出会った病原体も「自分ではなく病原体である」と見分けて、さらにその種類に応じた免疫応答を起こす必要があり、これを担っているのが自然免疫である。自然免疫研究はショウジョウバエによる研究が進展の大きな力となっており、2011年ノーベル医学生理学賞受賞のホフマン博士をはじめとして、優れた研究がなされてきている。ショウジョウバエによる研究がどのようにヒトの自然免疫の研究に生かされてきたのかについてお話ししたい。
また、感染を防御する側(宿主)の免疫と、感染する側である病原体の戦略は、実は常にせめぎ合いの状態にある。宿主が負けた場合が、身近な例では免疫低下による日和見感染である。病原体の様々な感染戦略とそれに対抗する宿主免疫の戦略について、我々の研究も含めて紹介したい。
矢野環先生のご略歴
東北大学大学院薬学研究科 准教授
■専門:細胞生物学
■略歴:
平成8年3月 東京大学大学院薬学系研究科終了、博士(薬学)
平成8年4月 EMBL-Heidelberg 博士研究員
平成10年10月 大阪府立母子保健総合医療センター研究所 研究員
平成10年11月 東北大学大学院薬学研究科 研究員
平成20年2月 東北大学大学院薬学研究科 助教
平成21年4月 東北大学大学院薬学研究科 准教授 現在に至る