ミツバチの尻振りダンスを司る脳の分子・神経的基盤

久保 健雄先生(東京大学大学院理学系研究科)

餌場を見つけて帰巣したミツバチの働き蜂は、尻振りダンスを用いて仲間に餌場の位置を教える。尻振りダンスは、餌場の方向と距離がそれぞれダンスの傾きとダンス時間として伝達される点で記号的コミュニケーションの一種と考えられる。ヒトの言語は記号的コミュニケーションであるが、ヒトの脳には言語機能を司る言語野が存在する。ハチの脳にも同様に「ダンス言語野」とも呼べるような特別な脳領野があるのではないだろうか?ミツバチの脳領野選択的に発現する遺伝子に関する研究から、ミツバチの脳の高次中枢(キノコ体)は、異なる遺伝子発現プロフィルをもつ数種類の神経細胞(ケニヨン細胞)からなることが分かってきた。最近では新規なケニヨン細胞も発見されている。さらに、採餌飛行を行う働き蜂の脳では、どのケニヨン細胞が活動しているのかも判明した。現在、解明されつつある尻振りダンスを司る脳の分子・神経的基盤をご紹介差し上げたい。




 

久保健雄先生のご略歴


東京大学大学院理学系研究科 教授

■専門:動物生理化学

■略歴:

昭和62年11月 東京大学薬学部 助手(平成4年11月まで)

平成 4年12月 東京大学薬学部 講師(平成7年 6月まで)

平成 7年 7月 東京大学薬学部 助教授(平成9成 3月まで)

平成 9年 4月 東京大学大学院薬学系研究科 助教授(平成13年 3月まで)

平成13年4月 東京大学大学院理学系研究科 教授 現在に至る


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