これまでに注力してきた東南アジア熱帯地域におけるフィールド研究では、新分類群の発見と記載を進めつつ、特異な葉形態に着目したエボデボ研究への転換も進めてきた。例えば熱帯で見られる無限葉(無限成長の可能な葉:モノフィレアやグアレアなどが示す特異な発生様式)の発生進化メカニズムについては、RNA-seqを端緒とした解析を進めており、通常の葉原基とは異なる遺伝子発現ネットワークの存在が見いだされてきている。また多雨環境に適応した渓流沿い植物の狭葉化、アリ植物における葉身基部の袋状構造の発達、あるいは腐生植物(菌寄生植物)の鱗片葉の進化なども熱帯調査に始まったテーマ例である。その他、本来ならば葉の背腹軸境界でのみ平面成長するはずのところ、背軸側の性質しか持たない葉・単面葉が、どういったしくみで平らになれるのか、イグサ属を使った解析も進めている。モデル植物での知見を活かしつつ、シロイヌナズナでは見られない特異な形態の葉について、その発生機構の理解を深めようとするものである。

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