東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻
令和7年度 研究室概要
生物科学専攻および関連三学科の沿革、組織、教育と研究の概要
教員一覧、研究室紹介、修了後の進路、建物配置図など
生物科学専攻は、ミクロな分子レベルの共通基盤から生物多様性を重視したマクロな生物科学まで広い分野をカバーし、物理学や化学、情報科学などの関連分野とも連携しながら、分子から生態系までの多様な視点から生命の謎の解明に挑んでいます。以下に示すように、協力講座の基盤生物科学講座には遺伝子実験施設、臨海実験所、植物園本園、分園が含まれ、また本学の附置研究所、他研究科および国立科学博物館等の研究室も参加して有機的な連携を行うことによって、他の大学院組織には類を見ない研究と、学部ならびに大学院の教育を推進しています。
生物科学専攻長の東山哲也です。昨年度は、修士中間発表会の5年ぶりの対面開催に始まり、秋期博士論文予備審査発表会や修士論文発表会など、教務イベントが次々に対面開催となりました。修士中間発表会の様子は、理学部ニュース2024年5月号の表紙も飾りました。さらに、初めて教授忘年会も開催するなど、コミュニケーションを重視した楽しい1年となりました。また、3つの教授承継ポストを用いました女性限定人事が完了し、グローバル理学担当として外国人准教授が着任するなど、多様性も加速しました。こうした背景のもと、専攻活性化の議論も進み、大学院入試方法の改革、専攻の研究教育の柱となる「未来予測生物科学」の拠点形成に向けた活動、特定基金「理学部2号館を救え」プロジェクトの開始など、将来に向けた様々な動きがありました。先が読みにくい国内外の状況において、引き続き次世代を育てる確かな研究教育と、柔軟で機動力の高い専攻の運営を目指して参ります。
さて、ここにお届けしますのは、本学大学院理学系研究科生物科学専攻と、理学系研究科附属植物園、臨海実験所、遺伝子実験施設の、昨年度(2024年度)の教育・研究活動についての年次報告書です。2014年に(旧)生物科学専攻と(旧)生物化学専攻が統合し、(新)生物科学専攻が誕生してから10年以上が経ちます。両専攻はともに長い歴史をもち、(旧)生物科学専攻の前身である生物学科は、東京大学創設(1877年)と同時に設置されていますから、本専攻は150年ちかい長い歴史をもつことになります。東京大学が総説されて間もないころの生物学科や植物園を舞台としたNHKの「らんまん」に続き、昨年竣工から90年を迎えた2号館の歴史に触れる機会も増えました。脈々と続く歴史のなかで絶えず変化し続ける専攻を、まるで生物の進化のように感じています。
現在の生物科学専攻は、ミクロな原子・分子レベルから、細胞・個 体レベル、生物多様性に関するマクロなレベルの生物科学に加えて、生物情報科学、医科学までの、生物科学の広大な研究分野をカバーする大きな組織です。生物科学専攻の基幹講座は、生物学講座、生物化学講座、光計測生命学講座の3講座であり、これに臨海実験所、植物園、遺伝子実験施設をはじめとする協力講座や連携講座の教員、併任教員を加えた約90名の教員が、当専攻を構成しています。いずれの研究分野でも日々、新しい知見が得られており、日本のみならず、世界をリードする研究成果が発信されています。当専攻の大学院の定員は修士課程が84名、博士課程が44名ですが、修士課程修了生の半数近くは博士課程に進学し、大学院修了生はアカデミア、官公庁、民間企業など、さまざまな職種で活躍しています。一方で、専攻が理学部1号館~3号館に分散して存在することや、理学2号館の老朽化は、いよいよ大きな問題となってきております。新棟建設を強く大学本部に求めつつも、専攻教職員一同、 自分たちでできる未来に向けた教育・研究の展開や組織改革を目指し、「受け身」から「攻め」へと大きく意識を変えた2024年だったと思います。引き続き、努力して参る所存です。2024 年度の私たちの報告書にお目通しいただき、忌憚のないご意見をいただけますと幸いです。何卒、宜しくお願い申し上げます。
生物科学専攻長
東山哲也