研究内容

3.脳はどのように外界から得られた情報に基づき意思決定して最終的な行動へと出力するのか?

外界から入る感覚情報が個体にとってどのような意味を持つのかは、先天的にコードされている情報に加えて、個体の経験に依存的して決まる後天的な価値決定機構が存在します。私たちは、外界からの感覚情報に「好き・嫌い」の価値情報を付加する神経基盤に着目して研究を進めています。

ショウジョウバエは、わずか5日間で幼虫から蛹を経て成虫へと変態を遂げます。面白いことに、幼虫と成虫は同じ外部情報に対して全く異なる反応を示します。たとえば、幼虫は可視光を嫌いますが、成虫になると光に対して強い誘引行動を示します。同じように、幼虫がとても好む嗅物質の中には、成虫に対して忌避物質となる例があります。このような変態にともなう嗜好性の逆転は、変態の過程において脳神経回路に何らかの変化が加えられた結果生じると考えられますが、その神経基盤はわかっていません。私たちは、組織学的手法および光遺伝学的手法を駆使して、「嗜好性を規定するメカニズム」と「嗜好性が変化するメカニズム」を回路レベルで理解することを目指しています。これまでに忌避行動を制御する「コマンド・ニューロン(行動を誘導するために、そのニューロンの活性化が必要十分である少数ニューロン群)」の同定に成功し、そのコマンド・ニューロンを手がかりとして、嗜好性制御に関わる局所神経回路の同定と制御原理の解明を行っています。

○キーワード○
行動の時間枠
嗜好性(好き嫌い)の決定メカニズム
嗅覚情報処理と誘引行動への表出メカニズム
痛覚感覚処理と忌避行動への表出メカニズム

【参考文献】
Morikawa et al. PNAS 2011

幼弱期の幼虫(生後96時間)は可視光に対して忌避行動を示すが、蛹化直前の幼虫(生後120時間)は可視光に対して誘引行動を示すようになる。

幼虫の嗜好性行動

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