研究内容

1.遺伝情報と外部情報の相互作用により機能的な脳が作り上げられる仕組み

私たちの脳の構造基盤である神経ネットワークは、DNAに刻まれた遺伝情報に基づき胎児期(胚生期)に作り上げられます。しかし、出生直後の神経ネットワークは断線や混線を多数含んでおり、脳はその機能を十分に発揮することができないことが分かってきました。出生後の発達段階において、様々な情報が外界から脳に入ると、それに応じて必要な回路の強化と不要な回路の切断・除去が起こることにより、機能的な情報処理回路へと成熟するのです。このような脳神経回路の再編は、個々の経験により変化することから、ヒトの個性を生み出す主要メカニズムの1つではないかと考えられています。また近年の研究から、ヒト発達期における不要神経回路の除去不全が自閉症など発達障害の一因となることが示唆されています。私たちは、マウスとショウジョウバエの脳神経回路をモデルとして、(1)遺伝子と経験、(2) シナプスや局所回路の再編メカニズムや、(3)神経回路の自己組織化メカニズムの解明に取り組んでいます。

○キーワード○
神経回路の自己組織化
不要回路(神経突起、シナプス)の選択的除去
ミトコンドリア
エピジェネティクス
カルシウム振動
ニューロンーグリア相互作用
ゲノム編集技術

【参考文献】
Emoto et al. Cell 2004
Emoto et al. Nature 2006
Soba et al. Neuron 2007
Parrish et al. Genes Dev. 2007
Koike-Kumagai et al. EMBO J. 2009
Yasunaga et al. Genes Dev. 2015

上図:ショウジョウバエ幼虫期の感覚ニューロンは放射状の樹状突起をもつが、変態期に入ると、樹状突起だけが刈り取られ、細胞体と軸索は残る。その後、変態期後期になると、成虫型の樹状突起が再生する。
下図:成虫型の樹状突起は、成虫が羽化してから24 時間以内に放射状から格子状へと劇的なリモデリングを遂げる。このリモデリングは、細胞外プロテアーゼMmp2 による基底膜分解により制御される(Yasunaga et al. Developmental Cell 2010)

刈り込みが起きる樹状突起に発生する局所性カルシウム振動(Kanamori et al. Science 2013)。詳しくは「研究ハイライト」をご覧下さい。
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