東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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2009 UCSF Tetrad retreat参加報告書

分子細胞生物学研究所 核内情報研究分野 朝妻知子

 グローバルCOEのサポートにより、国際交流プログラムの一環であるTetradリトリートに参加させていただきました。簡単ではありますが、ここに報告させていただきます。

 Tetradリトリートに参加する前に、約一週間かけて、Rockefeller大学のBob Roeder先生、Harvard大学のMyles Brown先生とBruce Spiegelman先生、UCSFのDavid Pearce先生、Holly Ingraham先生、Yun-Fai Chris Lau先生、Daniel Bikel先生の研究室にお邪魔させていただきました。どの先生方も親切で、また研究室メンバーに最新の研究内容について伺うことができ、自分の研究に対する異なった切り口からの質問もいただき、大変有意義な時間を過ごせました。また、コアシステムを中心に、効率化を図ったアメリカのシステムにも感心しました。伺った研究室は大学院大学であり、また一学年に入学できる人数も大変少ないため、修士二年である自分と同年代の人には残念ながら会うことができませんでした。

 しかし、その後のリトリートでは、たくさんの学生と話をする機会に恵まれました。リトリートの主旨は、新学期を迎えたばかりの大学院1年生に研究内容を紹介して、研究室選びの参考にしてもらうものです。Tetrad programに属する大学院生は、最初の1年間、複数の研究室を数ヶ月単位で回り、体験してから所属研究室を決定し、2年生になってから本格的に研究生活を始めます。このため、スケジュールのほとんどは、教授やPIによるレクチャーでした。1年生向けの話なのでその分野に精通していなくても分かりやすく、合間にジョークが飛び出すような親しみやすい講義でした。学生やポスドクによるポスター発表はレクチャーの合間に行われ、自分も発表させていただきました。たまたま似た分野の研究をしている同じ年の学生を見つけ、ポスターの話から逸脱して、研究室の様子や日々の過ごし方などについても質問してしまいました。彼女は研究室に入ってから、数ヶ月かけてテーマを決定したようで、ポスターに実験データは一つもありませんでした。しかし、教授らとのディスカッションの末、自分のアイディアで決定したことに誇りを持っていました。彼女だけでなく、博士一年程度にあたる学生の多くは、自分の環境に満足している様でした。修士でも卒業できる日本の大学院と比べ、始めからPhD.を取る意気込みがあることもその要因の一つかも知れません。体験の後に所属先を決定できるシステムも学生にとって有効なものだと思います。また、何事に関しても情熱があり、誰もが研究以外に何かこだわりの趣味を持っていて、メリハリのついた生活を送っているようです。国民性の違いもあるかとは思いますが、彼らのエネルギーを強く感じました。

 この他にも、様々な研究について、様々な人と議論することができました。大学院生であるにも拘らず、一人の研究者として接してもらうことができたのも嬉しい驚きでした。また、このような場での発表は初めてでしたので、全く知識のない人や、所属の決まっていない新入生に興味を持ってもらえたことは新鮮でした。

 このプログラムは大変自由度が高く、自主性が問われたアメリカ訪問でした。始めは、大御所に突然連絡しても相手にされないのではないかと思っていましたが、今となっては、勇気を出して色々な教授に連絡してよかったと思います。多少ハードスケジュールな点もありましたが、とても充実した日々を過ごせました。今回の訪問において、アメリカの研究室間のコミュニケーションのオープンさがとても印象に残っています。多くのコラボレーションが生まれ、より大きな研究へと昇華していくことが可能な環境だと感じました。また、人との繋がりを得ることもできました。リトリートの最終日、遅くまで語り合った友人たちと連絡を取り合い、将来、お互い成長した姿で再会することを願っています。サイエンスという共通の興味により得られた彼らとの出会いはとても刺激的で、今後の自分の活力になると確信しています。

 最後になりましたが、このような機会を与えて下さった多羽田先生をはじめとする本グローバルCOEの諸先生方、UCSFの関係者の方々に心より感謝申し上げます。