東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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USCF Neuroscience Retreat 2008 参加報告書

理学系研究科 生物科学専攻 細胞生理化学研究室 奥山 輝大

今回、GCOEの国際交流プログラムとして、UCSF Neuroscience Programのリトリートに参加させて頂きました。本プログラムでは、UCSFリトリートへの参加に主眼が置かれているだけではなく、その前後でいくつかの研究室を訪問し、関連研究分野のPIの先生方とのディスカッションの機会を得ることができました。私は7月下旬から8月上旬頃に、先方にディスカッションをさせて頂きたいという旨のメールを出したところ、多くのPIの先生方から快い御返事を頂くことができ、Sam Pleasure先生にホストラボを引き受けて頂きました。

リトリート自体は、サンフランシスコから数百キロほど南下した場所に位置するアシロマというリゾート地で行われました。プログラムは、講演、ポスター、フリータイムから成り立っていました。このリトリートは主に大学院の上級生が企画し、入学したばかりの1年生へのレクリエーション的な意味合いも含まれるため、時間にはかなり余裕を持った構成になっていました。私にとって、最も衝撃的だったのは、大学院生の少なさと、そのアグレッシブさでした。UCSFのNeuroscienceには70近い研究室がひしめき合うなかで、そこに入学する大学院生はわずか9人で、まさに「少数精鋭」という言葉を実感しました。夜にはポスター会場で、お酒を飲みながらお互いの研究のディスカッションをする時間が用意されていて、熱気溢れる研究トークがあらゆるところで交わされていました。

リトリート後は、UCSFに戻り、3日間に渡り、ディスカッションを行いました。1日目は10時から、マウスの神経新生の研究をされているArturo Alvarez-Buylla先生とそのラボの大学院生、ポスドクの方々のお話を聞く機会がありました。1日目では全員の話を聞ききれなかったので、2日目の朝9時からまたディスカッションを入れて頂きました。2日目はBuylla研でのディスカッションの後、学内巡回バスでMission Bayキャンパスまで移動し、10時半よりホストラボのSam Pleasure先生とそのラボのポスドクの方々のお話を聞かせて頂きました。その後、14時過ぎから、ゼブラフィッシュを用いて行動と神経回路を繋ぐ研究をされているHerwig Baier先生の研究室を訪問させて頂きました。本来はそこで終了の予定でしたが、Herwig Baier先生から「あなたの研究の話をNirao Shahに紹介したいのだが、今から時間がありますか?」と尋ねられたので、御紹介頂くこととなり、マウスで性行動の研究をされているNirao Shah先生の研究室も訪問させて頂きました。夜には、ゼブラフィッシュで神経新生の研究をされているSu Guo先生の研究室を訪問させて頂きました。Su Guo先生は、UCSFのリトリートで知り合った大学院生の研究室のPIの方で、急遽お話を伺わせて頂くことになりました。3日目は、知人がポスドクとして働いているNASA Ames Research Center(サンフランシスコから電車で小一時間ほど)にお邪魔させて頂き、Lynn Rothschild先生とお話させて頂いた後に、研究セミナーを行いました。

後半に「紹介」という言葉が多くなりましたが、日本とアメリカの差異として、私が最も感じたのは「情報を共有する事への意識の高さ」でした。彼らは「interesting」だと感じるや否や、即座に「共有」へと意識を転換して、さらなる発展やお互いの利益となることを模索し始めることがしばしばあり、その姿勢に非常に驚かされました。その事実を反映するように、リトリートでUCSFの先生方の研究発表を拝聴させていただいた時に目を引いたのは、学内でのコラボレーターの多さです。この探求スタイルは見習うところが多く、今後の自分自身の研究に対して活かすべき点であると感じました。

最後に、ディスカッション予定をこれから立てられる方へのアドバイスを書きたいと思います。役立てて頂ければ幸いです。第一に、研究室の場所の問題です。東大のキャンパスが、本郷と駒場と柏の三カ所に別れているのと同様、UCSFもいくつかのキャンパスに分かれており、Neuroscience系の研究室は主に、ParnassusとMission Bayの二カ所にあります。お互いの間は学内バスで繋がれているものの、多少の距離がありますので、ディスカッションの日程を組まれる際には、先にどちらのキャンパスに研究室があるのかを確かめてからの方が時間の無駄が省けます。第二に、ディスカッションの時間についてですが、かなり余裕を持たせる方が良いです。PIと話す機会だけではなく、そのラボの大学院生やポスドクと話す機会、延いては前述のように、近隣のラボのPIを御紹介頂ける場合があります。また、食事を一緒に取り、様々なことを話すことによって、よりその雰囲気を体感することができます。第三に、近隣大学へのアクセスです。本プログラムは学生の利益を第一に考えて、極めてフレキシブルに対応して下さるため、UCSFに限定されることなく、近隣大学・研究所へと足を伸ばすことも可能になっています。UCLA、UCSD、スタンフォード、カルテックなども視野に入れて、御予定を立てられると関連研究分野の先生方と多くディスカッションができるかと思います。

今回はGCOEプログラムのおかげでUCSFのリトリートに参加するという非常に貴重な体験をさせて頂きました。最後になりましたが、本プログラムにおいて多大な御尽力を賜りました多羽田先生に、この場を借りて心より感謝申しあげます。ありがとうございました。