東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
ホーム > 国際交流 > 2010 GCOE retreat developmental biology in UCSF 報告書

2010 GCOE retreat developmental biology in UCSF 報告書

理学系研究科生物科学専攻 動物発生学研究室 松尾萌

今回は、グローバルCOE国際交流プログラムの援助により、UCSF developmental biology retreat に参加するという貴重な経験をさせて頂きましたので、その内容を報告致します。

リトリート自体は2月7–8日、北カルフォルニアにあるMarconi conference centerにて行なわれました。これと前後して、UCSFやスタンフォード大学の研究室を複数訪問し、自分自身の研究などについて有意義なディスカッションを行なう事ができました。研究の細分化が進んでいるため、的確なアドバイスを求める場合、自分とよく似た研究を行っている研究者とのディスカッションはとても重要です。しかし相手が海外にいる場合、実際に会って具体的なアドバイスを得る事は容易ではありません。今回、幸いにもこの様な機会を得る事ができて、今後の研究などについて多くの示唆を得られました。

今回のリトリート参加を通して、アメリカと日本では研究のレベルに関する違いはないという事を実感しました。しかし、同じ結果を得るのに経るプロセスに違いがあり、現在自分を取り巻く研究環境をより良くするための参考になりました。全体を通じて、アメリカの研究室では生物学の根幹に関わる問題から、具体的な実験のトラブルシューティングに至るまで、日常的によく話し合う光景を目にしました。実験に取り組む前から研究の意義、目標を達成する方法まで実に多くの人とのディスカッションを経ている事がわかり、見習いたいと思いました。今回の旅で、特に印象的だった事を三点挙げます。

①研究するための環境作りの見直し
gladstone研究所内の実験室は、同じ部門内の異なる研究室が一つの実験室で実験をし、機材などを共有するという非常に斬新な構造をしていました。実験のトラブルシューティングの際、適切なアドバイザーが手近にいない事は実験の効率に影響を与える深刻な問題です。実験室の壁を取り払い、研究室の垣根を越えて、気軽にアドバイスをしあう事で、この問題を解決した点に驚きました。

②部門内での情報共有
gladstone研究所では、cardiovascular 部門のRIP(Research in progress)に参加しました。月に一度、部門内の複数研究室がお互いの研究内容をリアルタイムに把握するという非常に面白い取り組みだと思いました。

③小規模研究室で成果を出す
RAを含めて5人という小さな研究室ながら優れた論文を定期的に出している研究室がありました。PIは、RAやポスドクと隣り合わせで実験を行ない、結果が出次第すぐに確認し、上手くいかない場合の対策を話し合っていました。PIが間近で実験を行なう事が、研究室全体の研究スピードの底上げになっていると感じました。

最後になりますが、大まかな旅程を付記します。

2月3日:サンフランシスコに到着。
2月4日:UCSFのKeith Mostov教授の研究室を訪問。午後は、同じ敷地内にあるGladstone研究所を訪れ、山中伸弥教授の研究室でポスドクをしている林氏にGladstone研究所を案内してもらう。
2月5日:スタンフォード大学のMaxence Nachury 准教授の研究室を訪問。
2月6日:UCSFのJeremy Reiter准教授の研究室を訪問。以後、自由時間。
2月7日:UCSF developmental biologyリトリート参加。
口頭発表のセミナーを14:30〜18:00。ポスターセッションを21:00〜24:00。
2月8日:口頭発表を8:30から12:00。その後、解散。
2月9日:スタンフォード大学のTim Stearns教授の研究室を訪問。
2月10日:日本に向けて出発。

今回、この様な機会を下さった多羽田先生とgCOEの関係の皆様に深く感謝致します。

参考写真(上)UCSF mission bay campusにて (下)Gladstone研究所にて

UCSF mission bay campusにて

Gladstone研究所にて