分子行動遺伝学研究室

■研究課題


  1. 学習・記憶のしくみの研究
  2. 感覚受容,神経系の情報処理,行動制御の機構の研究
  3. 「気まぐれ行動」が起こるしくみの解明
  4. フェロモンによる個体間相互作用と種内・種間多様性
  5. 全神経ネットワークの同時測定とコンピュータモデリング

線虫を用いて脳神経科学の基本原理を発見する

神経系は生物のもつ最も高度な情報処理システムである.味覚,嗅覚,その他の物理的刺激をどのような機構で感じるか,それをどう認識して評価するか,神経系のどこに情報が記憶として蓄えられるか,いかに記憶を引き出して目的に沿った行動を行うか,など多くの疑問がある.神経系の複雑さのためにこれらの疑問の答えを得るのは難しいことが多く,できるだけ簡単なモデル系での解析が有利である.本研究室では,全神経細胞に名前がついており,回路のつながりも完全にわかっている線虫 C.エレガンスを使うことにより,上記のような基本的な疑問を解明する研究を行っている.線虫の研究では一人の大学院生がさまざまな研究アプローチを併用することが可能である.例えば,行動がおかしくなる突然変異体の分離,外来遺伝子の導入や内在遺伝子の改変,共焦点顕微鏡による微細構造観察や3次元再構築,行動パターンを定量化するシステムの利用,動いている線虫を電動ステージで追尾しながら神経の活動を観測するシステム,動いている線虫に光を当てて特定の神経を活動させ行動がどう変わるかを調べるシステムなど,最先端の技術と機器を用いて,分子・神経回路・行動の相互関係を明らかにすることができる.神経活動を コンピュータの中で再現し,そこに潜む動作原理を明らかにするインシリコ解析も進めている.さらに,線虫で見いだした重要な分子の機能を哺乳類のマウスで調べる研究も進行中である(共同研究).これらを通して脳の働きの理解につながる成果を目指している.

http://molecular-ethology.biochem.s.u-tokyo.ac.jp/IINO_lab_J.html

教授:飯野 雄一

准教授:國友 博文

助教:豊島 有

助教:富岡 征大
電子顕微鏡観察により完全解明された神経回路がどう働いているかが世界的な研究課題(左図はOpen WormプロジェクトによるCG表現).