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研究室メンバー / 三井 優輔（みい ゆうすけ）の研究紹介 †
counter: 6325 （2009/10/03~）
研究内容 †
1. 分泌性因子Wntの拡散性に関する研究
複雑な体制（body plan： 基本的な体のつくり）をもつ多細胞生物が一個の受精卵から細胞分裂を繰り返し、秩序だった体のかたちを作り上げるには、何らかの位置情報が必要だと考えられる。この点、分泌・拡散によって濃度勾配を形成しうる分泌性のシグナルタンパク質は位置情報を与える分子的実態として有力な候補といえる。すなわち濃度勾配に対して、細胞や組織が濃度依存的な応答を示すことで濃度勾配は一種の座標軸の役割を果たす。このような、位置情報を与える濃度勾配を作る物質のことを一般にモルフォゲンと呼ぶ。
分泌性糖タンパク質のWnt（ウィント）は発生だけでなく、再生や癌、幹細胞などにも関わることが知られている重要なシグナルタンパク質であるが、Wntもまたモルフォゲンの一つだと考えられている。脊椎動物胚ではWntは後方化因子として働くことが知られており、実際、胚の後方で発現している。さらにWntは胴部領域の伸張をもたらす収斂伸張運動を制御していることも知られている。
一方前方の頭部領域では、secreted Frizzled-related protein（sFRP）などのWnt阻害因子が発現しており、頭部領域がWntによって後方化されたり、収斂伸張してしまうのを防いでいる。つまり、WntとsFRPは脊椎動物の基本的な体制である、丸い頭部と細長い胴部からなる「おたまじゃくし型」を作り上げる上で重要な役割を果たしているといえる。
当然、WntやsFRPのモルフォゲンとしての性質を考える上で、それらが分泌されると、組織の中をどの程度拡散するか（拡散性）は基本的かつ重要であると考えられる。しかしながら良い方法がなかったため、これまでその拡散性は脊椎動物胚では全くといってよいほど知られていなかった。
我々はXenopus胚を用いて分泌性因子を改変型GFPの一種であるVenusで標識し、その拡散性を評価する手法を確立した。それを用いてWntとsFRPの拡散を調べたところ興味深いことに、Wntはほとんど拡散せず、発現域に留まっているのに対し、sFRPは拡散性が高く、胚全体に広がることを見出した。そこで、我々は拡散性の高いsFRPをWntと共発現させるとWntの拡散性に影響を及ぼすのではないかと考え、実験を行うと予想通り、Wntの拡散性が高められることを確認した。
さらに解析を進めた結果、sFRPは従来知られていた、Wnt阻害因子としての役割以外に、Wntを運搬し、Wntの作用範囲を広げる活性を持っていることを初めて示した。
2. 抗体cDNAのクローニングと遺伝子工学的改変、および細胞生物学的応用
研究成果 †
原著論文 †
Yusuke Mii and Masanori Taira (2009).
Secreted Frizzled-related proteins enhance the diffusion of Wnt ligands and expand their signalling range.
Development 136, 4083-4088.
Pubmedへのリンク→ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19906850
(Rated as "Must Read" in "Faculty of 1000 Biology")
http://www.f1000biology.com/article/id/1251957
総説 †
Mii, Y. and Taira, M. (2011).
Secreted Wnt "inhibitors" are not just inhibitors: Regulation of extracellular Wnt by secreted Frizzled-related proteins.
Dev. Growth Diff. 53, 911-923.
Pubmedへのリンク→ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21995331
＊表紙を飾りました＊~
学会発表およびセミナー発表 †
Yusuke Mii, Kenichi Nakazato, Atsushi Mochizuki and Masanori Taira
“Frzb regulates extracellular distribution of Wnt8 via interactions with heparan sulfate”, （三井、口頭発表およびポスター発表） Wnt2011 meeting, UCLA, California, U.S.A.（2011年6月29日〜7月3日）
awarded as "honarable mention"
Yusuke Mii, Kenichi Nakazato, Atsushi Mochizuki and Masanori Taira
“Secreted Frizzled-related proteins (sFRPs) regulate extracellular distribution of Wnt ligands via interactions with heparan sulfate.” （分泌性Frizzled関連蛋白質 (sFRPs) はヘパラン硫酸を介して細胞外のWntリガンドの分布を制御する。）
（三井、口頭発表およびポスター発表）
『日本発生生物学会第４４回大会』、OP03-01 (P-1138)、沖縄、2011年5月
Yusuke Mii, Kenichi Nakazato, Atsushi Mochizuki and Masanori Taira Secreted Frizzled-related proteins (sFRPs) regulate extracellular distribution of Wnt ligands via interactions with heparan sulfate. 分泌性Frizzled関連蛋白質 (sFRPs) はヘパラン硫酸を介して細胞外のWntリガンドの分布を制御する。
三井 優輔
細胞外におけるWntの拡散性およびシグナル範囲の制御
基礎生物学研究所 部門公開セミナー、岡崎
2011年1月28日
三井 優輔、中里研一、望月敦史、平良眞規 光変換型蛍光蛋白質によるWntの動的拡散の定量的解析 （口頭発表）
日本発生生物学会 夏季シンポジウム2010 2010年8月25日〜27日 八王子セミナーハウス
Yusuke Mii, Atsushi Mochizuki and Masanori Taira “Enhanced diffusion and signaling range expansion of Wnt ligands by secreted Frizzled-related proteins （分泌性Frizzled関連蛋白質によるWntの拡散性の上昇およびシグナル範囲の拡大）” （三井、ポスター発表） 日本発生生物学会第４３回大会、京都（2010年6月20日〜23日）
Yusuke Mii & Masanori Taira
"Regulation of the diffusion and the signaling range of Wnt ligands by secreted Frizzled-related proteins" （oral presentation）
UCSF developmental biology retreat
2/7-8/2010 Marconi Conference Center, California, USA
三井 優輔、平良 眞規
Wnt結合タンパク質Frzb、CrescentによるWntリガンドの拡散性およびシグナル範囲の調節 （三井、ポスター発表）
定量生物学の会 第２回年会 2010年1月11日 大阪大学（大阪府）
Masanori Taira and Yusuke Mii "Regulation of the diffusion and the signaling range of Wnt ligands by secreted Frizzled-related proteins" 理化学研究所望月研セミナー、和光（2009年12月16日）
Yusuke Mii and Masanori Taira “Positive and negative regulation of an active gradient of Wnt by secreted Frizzled-related proteins in anteroposterior patterning （前後軸パターニングにおける分泌性Frizzled関連蛋白質によるWnt活性勾配の正と負の制御）” （口頭発表） 日本発生生物学会第４２回大会、新潟（2009年5月28日〜31日）
三井優輔、平良眞規 “分泌性Frizzled関連蛋白質によるWntの拡散性の上昇とシグナル範囲の拡大” （シンポジウム）日本動物学会第７９回大会、福岡（2008年9月5日〜7日）
三井優輔、平良眞規 “Secreted Frizzled-related proteins, Frzb1 and Crescent, alter diffusivity of Wnt ligands through extracellular interactions” （口頭発表） 日本発生生物学会第４１回大会、徳島（2008年5月28日〜30日）
三井優輔、平良眞規 "分泌性Frizzled関連蛋白質Frzb1及びCrescentの細胞外相互作用によるWnt拡散性の変化" （口頭発表） Xenopus若手ワークショップ、徳島（2008年5月27日）
三井優輔、中島優香、平良眞規 “分泌性Frizzled関連タンパク質（sFRP）の２量体形成とWntとの相互作用および拡散性の解析” 第30回分子生物学会年会、横浜（2007年12月11日−15日） （口頭およびポスター発表）
e-mail: mii[at]biol.s.u-tokyo.ac.jp
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