![[LMB]](image/LMB-logo-EggDNA.jpg "[LMB]"){kind=logo}
ネマトステラ（Nematostella vectensis）について（2010/01/23写真up） †
Written by Yasuoka
生息地域： †
北米・欧州の汽水域に生息しており、イングランド、カナダ・ノバスコティア、アメリカ・ジョージア、カリフォルニア、オレゴン、ワシントンなどから個体が採集され、飼育されている。
当研究室で飼育されている個体は、メリーランド州チェサピーク湾河口域のロード川から1987年12月に採取された12個体の直系にあたる系統と思われる。同じ系統からJGIによるゲノムプロジェクトが行われ、データベースとして公開されている。この個体群は、Cadet Hand博士→Ulrich Technau博士→藤沢敏孝博士→野中勝博士→当研究室という経路で得られたものである。
特徴： †
動物の分類の中では、刺胞動物花虫綱に属す。花虫綱はイソギンチャクとサンゴの仲間によって構成され、メデューサ型（クラゲ型）の生活環を持たず、一生をポリプ型で生活する。刺胞動物には他にヒドラやクラゲが含まれる。刺胞動物（Cnidaria）と左右相称動物（Bilateria）とを合わせて真正後生動物（Eumetazoa）と呼ぶ。
外見は一般的なイソギンチャクのイメージと異なり、細長で固着せず、体表は透明であり、どちらかといえばヒドラに近い。体全体が伸び縮みし、成体は最長で10~15 cmほどの個体になる。触手は胚発生から4本ずつ増えていき、成体では16本ほどになる。また、触手と口の周りに2種類の自家蛍光をもつ。
雌雄異体ではあるが、外見だけでは全く区別がつかないので、放卵と放精によって確かめる以外に、現在のところ雌雄を区別する方法はない。
 |
個体としての運動性は低いが、餌を食べるときは触手を活発に動かし、体内へと送り込む。神経は散在神経系で、ピンセット等で触ると縮むことから筋肉へ神経伝達されていることが伺える。
受精卵は大きさ0.2~0.3 mmほどの不透明な等黄卵で、卵割は全割である。温度にもよるが受精後6時間ほどで桑実胚、12時間ほどで胞胚、24時間ほどで原腸胚になり、2~3日ほどでプラヌラ幼生と言われる自由遊泳幼生になる。その後徐々に胚は俵型になって伸張していき、受精後1週間ほどで変態して触手を4本持った初期ポリプとなる。その後は単純成長していき、2~3ヶ月ほどで成体になる。
 |
 |
左：産卵直後の未受精卵 右：受精後数時間経った卵割期の胚
実験動物としての利点（右図は産卵中のメス個体）： †
 |
��1/3濃度の人工海水中で、インキュベーター内での飼育が可能（室温でも可）
��餌や掃除などの手間が余りかからず、飼育が容易である
��ゲノムデータベースが公開されており、系統も純化しているので、データベースの情報を有効活用できる
�げ硬拱儔修噺�の照射だけで、産卵を容易かつ同調的に誘導できる
�グ貪戮了才颪如�一個体が最大で数百〜千個の卵を産む
�Φ╂畧�がないので年中受精卵が得られる
�О豸賃里�約2週間おきに産卵でき、短期間で大量の受精卵が得られる
�╂�成熟に最短で2~3ヶ月と短く、遺伝学的な解析にも応用できる
��刺胞動物に属し、脊椎動物や節足動物を含む左右相称動物の外群として進化発生生物学的な解析に有用である
飼育： †
当研究室では、22℃のインキュベーター内でプラスチック製容器を用いて飼育している。ふたを閉めても空気の出入りがあるようにするため、電子レンジに対応した容器を用いている。1Lほどの容器に数十〜数百の個体を飼育している。餌は魚の餌などに用いられるブラインシュリンプで、週2回餌を与え、1週〜2週に1回容器の洗浄と水換えをするだけで他に特別な世話を必要としない。飼育には1/3濃度の人工海水をそのまま使用している。
最新の20件
- ネマトステラ
