ミヤマシジミ(絶滅危惧II類)
 本州の大河川中流域の河川敷や河岸段丘に生息するミヤマシジミは、近年の河川改修や護岸工事、宅地開発等により、全国的に激減しており、環境省で作成されているレッドリスト(レッドデータブックに揚げるべき日本の絶滅の恐れのある野生生物の種のリスト)では絶滅危惧II類に指定されている。本研究では、本種の過去と現在の国内の本種の生息地域とその生息状況を徹底的に調査し、国内での衰亡過程と衰亡要因を生態学的に解析することを試みている。
 現在までの調査では、1950年以降現在までに記録されてきた確実な産地と、未発表の確認産地の計16都県約300市町村のうち、現在絶滅したと思われる産地はおよそ6都県約140市町村に達し,この数は実に半数近くにのぼる。本種の分布推移を過去10年ごとに比較すると,1970年以降から生息地が大幅に減少し,特に分布の辺縁部や関東周辺で著しいことを明らかにしている。
 ミヤマシジミは人為的な変動に弱いため、水辺環境の指標生物として用いることで、大河川における水域生態系の多様度や安定度を評価することも可能である。一般に河川の生態系を無視した河川改修では、逆に洪水による水害、水質汚染等の様々な問題を招くことが近年注目されているが、本種の生存には、氾濫により多様な環境を作り出す後背湿地や河原の存在が重要であり、この水辺環境こそが豊かな水域生態系を育む。つまりミヤマシジミを環境指標として活用することで、各河川の環境評価だけでなく、本種を含む水域生態系の保全活動の推進、さらには地域社会の生活向上に役立つことが大いに期待される。

ミヤマシジミの雌雄型(右が雄、左が雌)