多細胞生物は細胞・組織間の緊密な連携の下に個々の細胞が適切に機能すべきシステムです.それ故に,そのような細胞機能の制御機構を知ることは,正常機能の理解だけではなく,その破綻による疾患の理解とそれに基づく診断・治療技術の開発においても極めて重要なことと言えます.そこで,本研究室では細胞機能の制御に重要なシグナル伝達機構について,シグナル分子やシグナル複合体の生化学的な解析からモデルマウスや臨床検体を用いた個体レベルでの解析を通じ,生化学,分子生物学,生理学及び病理・病態生理学的な視点からの包括的,かつ自由な研究を進めています.例えば,私達は運動機能制御を司る神経筋シナプスの新たな形成・維持シグナルを解明し,また,その知見をもとにDOK7型筋無力症と名付けた遺伝性疾患を発見しました.現在,当該シグナルの理解と様々な神経・筋疾患に対する神経筋シナプス形成増強治療の創出を進めると共に,腫瘍形成機構などの研究を推進しています.