天然の蛋白質の新たな機能を探索したり,蛋白質を人工的に改変,創製することにより,「生命の不思議さ」を分子レベルで追求することを目指している.例えば,天然蛋白質の新規機能の探索に関しては,従来蛋白質の翻訳系で重要な働きをすることが知られていたアミノアシルtRNA合成酵素が驚いたことに細胞外に分泌され切断後,サイトカインや血管新生の制御因子として働くことを見つけ,現在この制御メカニズムの分子,原子レベルでの解明を行っている.さらに,なぜ別の機能を獲得したのかなど分子進化学的必然性を明らかにすることにも挑戦している.新規蛋白質の人工的創製のテーマに関しては,多彩な機能を持った蛋白質が構造及び機能単位であるモジュールのシャッフリングにより進化してきたという「分子進化仮説」を実証し,現在この手法を用いて,細胞分化,細胞死,発生などを制御可能にする新規蛋白質を創製することを目指している.