慢性化した炎症(慢性炎症)はアレルギーや自己免疫疾患といった免疫疾患のみならず,神経変性疾患,循環器疾患,生活習慣病,さらにはがんや老化まで,幅広い疾患病態の形成に関わるため,炎症制御が病態改善につながる例は数多く知られています.しかしながら治療オプションは限られており,依然として大きなアンメットニーズが存在します.慢性炎症で中心的役割を果たす免疫細胞,特にマクロファージや好中球といった自然免疫細胞は,炎症を媒介すると同時に組織修復も媒介しています.こうした機能変容(可塑性)がどのように制御されているかは大きな謎です.自然免疫細胞は病原体や自己の死細胞など様々な起炎剤を感知し,そのシグナルはエンドリソソームにおいてエネルギー代謝と統合的に制御されて細胞応答に変換されます.エンドリソソームは炎症の場における複雑かつ多彩なシグナルを中継・統合するハブとして機能しており,自然免疫細胞のエンドリソソームの酸性化や輸送制御をかく乱すると,驚くほど良好に複数の疾患病態の改善と組織修復がもたらされます.このことは,エンドリソソームが機能的可塑性に重要であることを意味しています.私たちは自然免疫細胞の機能的可塑性の鍵を握るエンドリソソームシステムに焦点を当て,自然免疫細胞の組織修復能獲得とその破綻のメカニズムを明らかにすることで新たな疾患治療標的を同定し,アカデミア創薬へとつなげています.私たちと一緒に研究成果の社会実装,ベッドサイドに繋がる研究を目指してみませんか?