生物科学セミナー
第1563回生物科学セミナー『クライオ電子顕微鏡で観る、薬剤耐性を乗り越える抗菌薬のしくみ』
| 日時: | 2026年7月22日(水) 16:50-18:35 |
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| 場所: | 理学部2号館223号室及びZoom |
| 演者: | 横山 武司 准教授(北海道大学大学院水産科学研究院) |
| 演題: | クライオ電子顕微鏡で観る、薬剤耐性を乗り越える抗菌薬のしくみ |
| 主催: | |
| 共催: | |
| 後援: |
要旨
近年、既存の抗菌薬の作用を無効化する薬剤耐性微生物の出現が、人類の公衆衛生上の大きな問題となっている。この概念は、Antimicrobial Resistance (AMR)と呼ばれ、医療や研究の現場などが協調してこの問題に取り組むOne Healthと呼ばれるアプローチが求められる。AMR対策として、この薬剤耐性機構を乗り越える、新しい抗菌薬の開発が重要な課題となっている。
細胞内のタンパク質合成工場であるリボソームは、セントラルドグマの一角を担う、生命に必須の超分子複合体である。感染性細菌においても必須の分子であることから、抗菌薬の主要なターゲットの一つとなっている。リボソームは、mRNA上にコードされた遺伝情報を正確に読み取り、対応するアミノ酸の配列へと翻訳する。その際に、大腸菌では、46種類のtRNAや、10を超える翻訳因子が、連続的に結合・解離を繰り返すことでリボソームの構造ダイナミクスを変化させる。抗菌薬は、このリボソームに結合し、タンパク合成を撹乱、もしくは、停滞させることで機能する。
私たちは、クライオ電子顕微鏡を用いて、リボソームに対する抗菌薬による摂動が、どのように機能に影響を与えるのか、その分子メカニズムの解明に取り組んでいる。本セミナ―では、近年私たちが開発した、無細胞翻訳系を直接観察し、抗菌薬の作用機構をダイレクトに可視化するDRAC法についてご紹介する。さらに、有機合成による構造展開で新しく開発されたマクロライド抗菌薬KU13についてもご紹介する。この抗菌薬は、マクロライド耐性型抗酸菌に効果を示す新しい抗菌薬である。有機合成により導入された新しいモチーフが、リボソーム内でRNAの構造リアレンジメントを引き起こす様子をとらえた、最新の知見をご紹介する。
参考文献
Tomono et al., Direct visualization of ribosomes in the cell-free system revealed the functional evolution of aminoglycoside The Journal of Biochemistry 175(6): 587-598 (2024)
Isozaki et al., Creation of a macrolide antibiotic against non-tuberculous Mycobacterium using late-stage boron-mediated aglycon delivery Science Advances 11(10): adt2352 (2025)
担当
東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・発生細胞生物学研究室
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