生物科学セミナー
第1559回生物科学セミナー『マウスを用いた突然変異蓄積実験から考える生物進化』
| 日時: | 2026年6月24日(水) 16:50-18:35 |
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| 場所: | 理学部2号館223号室及びZoom |
| 演者: | 内村 有邦 副部長(放射線影響研究所) |
| 演題: | マウスを用いた突然変異蓄積実験から考える生物進化 |
| 主催: | |
| 共催: | |
| 後援: |
要旨
生物進化は、長い年月をかけて、新たに発生する突然変異が、自然選択を通じて、集団中に蓄積されていくことにより達成される。しかしながら、生殖系列(精子や卵子)を通じて、新たに発生する突然変異が、後世代に、どのような影響を及ぼすかは、よく分かっていない。私たちは、通常の野生型マウス(C57/BL6J)と突然変異の発生率を内因的に増加させた2種類のMutatorマウス(DNAポリメラーゼδ改変マウス、 DNAポリメラーゼε改変マウス)の兄妹交配を繰り返し、長期間、継代を続けることで、突然変異の蓄積が、後世代のマウスの表現型にどのような影響を及ぼすか、調べてきた。これまでの20年間の継代で最大71世代を経過したマウス系統を樹立した。これらのマウスの継代からは、毛色が変化したマウス、小鳥のように鳴くマウスなど、様々な表現型を示すマウスが出現している。また、Mutatorマウスの継代では、表現型異常を示す個体が多発し、繁殖能力の深刻な低下も観察された。私たちは、現在、次世代シーケンサーを用いて、生殖系列を通じて、そのような全ゲノムレベルのDNA配列の変化がどのように生じたか、詳細な解析を進めている。
今回のセミナーでは、生殖系列で新たに発生する突然変異が、生物進化に、どのように貢献し、どのような制約を与えているか、私たちの実験結果をもとに考えてみたい。また、古くから議論されている、現在のヒト集団における遺伝学的負荷の問題をどのように考えていくのがよいか、皆さんと一緒に考えてみたい。
参考文献
Uchimura et al. Germline mutation rates and the long-term phenotypic effects of mutation accumulation in wild-type laboratory mice and mutator mice. Genome Research (2015)
Uchimura et al. Early embryonic mutations reveal dynamics of somatic and germ cell lineages in mice. Genome Research (2022)
Wakayama et al. Limitations of serial cloning in mammals. Nature Communications (2026)
Lynch M. Mutation and Human Exceptionalism: Our Future Genetic Load. Genetics (2016)
担当
東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・発生細胞動態学研究室
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