東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻

Department of Biological Sciences
Graduate School of Science
The University of Tokyo

内部情報 第1535回生物科学セミナー『水平線の向こうには、何が待っているのだろう? ‐極限環境水域と微小底生動物の多様な生態‐』

生物科学セミナー

第1535回生物科学セミナー『水平線の向こうには、何が待っているのだろう? ‐極限環境水域と微小底生動物の多様な生態‐』

日時: 2026年1月14日(水) 16:50-18:35
場所: 理学部2号館講堂
演者: 嶋永 元裕 教授(熊本大学 くまもと水循環・減災研究教育センター)
演題: 水平線の向こうには、何が待っているのだろう? ‐極限環境水域と微小底生動物の多様な生態‐
主催:
共催:
後援:

要旨

 水深6000 mを超える超深海、100 ℃を上回る熱湯が噴出する深海熱水噴出域、凍てつく氷に囲まれた北極・南極、超閉鎖性内湾に季節的に発生する貧酸素水塊下の海底など、我々人類を含む「通常」の生物群が、生命活動を維持することのできない極限環境水域においても、特異な生物群が生存している。その一方で、潮だまりや、石畳を覆う湿った苔など、我々とっては身近な水環境は、水棲生物にとっては、乾燥や、温度・塩分の急激な変化など、生命活動の限界に達する危険性に直面する「極限環境」になりうる。
 演者が研究対象としている「メイオファウナ」は、体長1 mm未満の最小サイズの底生後生動物である。一見、大型の底生生物が存在しないように見える極限環境下の海底でも、線虫類・ソコミジンコ類・コウラムシ類など、特異な形態と生活史を備えたメイオファウナ群が生息している。
 このセミナーでは、熱水噴出域や日本有数の閉鎖海域である八代海の広大な干潟などで、演者が実際に行なった調査の様子や、これらの調査によって得られたメイオファウナの多様な生態に関する研究成果を、写真や動画などを見せながら解説する。その際に、極限環境に挑む研究者たちが、実際の調査中に直面した「極限」体験についても紹介したい。

参考文献

・The website of the International Association of Meiobenthologists. https://meiofauna.org/
・日本メイオファウナ研究会ウェブサイト https://sites.google.com/site/meiofaunajapan/
・Senokuchi R, ..., Shimanaga M* (2018) Chemoautotrophic food availability influences copepod assemblage composition at deep hydrothermal vent sites within sea knoll calderas in the northwestern Pacific. Mar Ecol Prog Ser, DOI: https://doi.org/10.3354/meps12804
・Shimanaga M* et al. (2015) Spatiotemporal changes in meiofaunal composition on soft substrates in the semi-enclosed inner section of the northern Yatsushiro Sea. J Oceanogr, DOI: https://doi.org/10.1007/s10872-015-0274-8

担当

東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・臨海実験所
問い合わせ先: