東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻

Department of Biological Sciences
Graduate School of Science
The University of Tokyo

内部情報 上村研究室公開ラボセミナー『周産期で変容する哺乳類生殖細胞のクロマチン』

ラボセミナー

上村研究室公開ラボセミナー『周産期で変容する哺乳類生殖細胞のクロマチン』

日時: 2025年12月10日(水) 17:00~18:00
場所: Zoom
演者: 山中 総一郎 教授(浜松医科大学 医学部 分子生物学講座)
演題: 周産期で変容する哺乳類生殖細胞のクロマチン
主催:
共催:
後援:

要旨

生殖細胞は、遺伝情報を次世代へと伝える特異な細胞系譜である。ヒトやマウスなどの哺乳類では、生殖細胞においてゲノム情報が「正確に維持」されるだけでなく、減数分裂期の組換えを通じて「ゲノム配列の多様性が創出」され、さらに親世代から受け継いだエピゲノム情報が「ほぼ完全に消去」される。このように、生殖細胞では遺伝情報の「維持」と「変化」という二つのベクトルが共存している。しかし、これら三つの要素――すなわちゲノムの維持、配列多様化、エピゲノムリプログラミング――がどのように相互に関連しているかについては、依然として未解明な点が多い。
 我々はこれらの要素の中でも、とりわけエピゲノム状態の動的変化に着目して生殖細胞の研究を進めてきた。マウスではDNAのメチル化が生命維持に必須であり、そのメチル化酵素の変異は胚性致死を引き起こす。一方で、胎仔期の生殖細胞分化過程では、ゲノム全体にわたってDNAメチル化が消去される。我々はこの時期の生殖細胞を用いて、抑制性のヒストン修飾であるH3K27me3がゲノム全体で減弱する過程や、クロマチンの三次元構造が一過的に弛緩するという現象を捉えた。さらに、この時期には通常は抑制されているはずのトランスポゾンが活性化するだけでなく、数千にも及ぶタンパク質コード遺伝子の発現も同時に上昇するなど、ゲノムを構成する多様な要素が、転写を許容する状態を取ることが明らかになった。
 本セミナーでは、マウス胎仔期生殖細胞に特有のクロマチン状態を紹介し、そこから形成される配偶子クロマチンの性質と、次世代における遺伝子発現制御との関係について議論したい。

参考文献

Li P, et al. (2024) Priming Epigenetic Landscape at Gene Promoters through Transcriptional Activation in Mammalian Germ Cells. bioRxiv, 2024. (doi: https://doi.org/10.1101/2024.11.24.625111)
Uneme Y, et al. (2024) Morc1 re-establishes heterochromatin on activated transposons and shapes the host transcriptome in gonocytes. Proceedings of the National Academy of Sciences, 121(13):e2317095121
Yamanaka S, et al. (2019) Broad Heterochromatic Domains Open in Gonocyte Development Prior to De Novo DNA Methylation. Developmental Cell, 51(1):21-34
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