東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻

Department of Biological Sciences
Graduate School of Science
The University of Tokyo

内部情報 濡木研究室公開ラボセミナー『ミトコンドリアの分裂と融合を制御する分子装置の構造とダイナミクス』

ラボセミナー

濡木研究室公開ラボセミナー『ミトコンドリアの分裂と融合を制御する分子装置の構造とダイナミクス』

日時: 2025年10月24日(金) 15:00~16:30
場所: 理学部1号館中央棟341号室
演者: 荒磯 裕平(金沢大学 医薬保健研究域保健学系 病態検査学講座 環境ストレス研究センター・准教授)
演題: ミトコンドリアの分裂と融合を制御する分子装置の構造とダイナミクス
主催:
共催:
後援:

要旨

ミトコンドリアは、エネルギー産生や様々な代謝反応を担い“細胞の機能発現の要”として働く。近年、ミトコンドリアの形態は極めて動的であり、分裂と融合がバランス良く繰り返されることで形態が維持され、機能を発揮することが分かってきた。ミトコンドリアの分裂と融合はダイナミンスーパーファミリーに属するGTPase群によって駆動され、分裂には細胞質に局在する可溶性タンパク質のDrp1、融合には膜貫通ヘリックスによって外膜に局在するMfn1及び2 (Mfn1/2)が同定されている。これらのタンパク質は共通して、球状のGTPaseドメインとヘリックスバンドルによって構成され、ミトコンドリア膜上でオリゴマー化し、GTPの加水分解に応じて膜構造を変化させると考えられている。近年の構造生物学の発展によりDrp1やMfn1/2の立体構造情報が蓄積されてきているが、これらのタンパク質が協調してミトコンドリア膜構造ダイナミクスを制御する分子メカニズムにはいまだ不明点が多い。そこで我々は、ナノメートルの空間分解能とミリ秒の時間分解能でタンパク質複合体のリアルタイム観察が可能な高速原子間顕微鏡(HS-AFM)を用いた1分子イメージングを駆使し、Drp1やMfn1/2のナノスケールの分子会合が、膜分裂や融合というメゾスケールの現象を駆動する動作原理の解明を試みている。
現在までに、出芽酵母発現系によってミトコンドリア膜タンパク質複合体を精製するプロトコルを確立し(Kobayashi, et al., 2024)、Drp1やMfn1を精製することに成功した。さらに、リン脂質膜上におけるDrp1やMfn1の分子動態をHS-AFMで可視化し、ドメインモーションや分子会合といった数ナノメートルの構造変化をリアルタイム観察する実験系を構築した。本セミナーでは、HS-AFM解析で得られたDrp1やMfn1の分子動画を紹介し、ミトコンドリアの形態を制御するための新規メカニズムを議論する。
また、最近我々は、タンパク質の構造研究で得られた原子・分子レベルの知見を個体レベルでの生理学研究に応用展開するため、ゼブラフィッシュをモデル生物とした生理学解析にも取り組んでいる(Imai, et al., 2025)。ここでは、ゲノム編集技術によるゼブラフィッシュ変異体系統の樹立とその応用例を示し、分子から個体まで一貫して生命現象を議論したい。

場所

理学部1号館中央棟341号室

担当

東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・濡木理
 
*学内限定
問い合わせ先: