生物科学セミナー
第1532回生物科学セミナー『ダークプロテインの同定とその発現制御機構の解明』
| 日時: | 2025年12月17日(水) 16:50-18:35 |
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| 場所: | 理学部2号館223号室及びZoom |
| 演者: | 松本有樹修 教授(名古屋大学大学院理学研究科) |
| 演題: | ダークプロテインの同定とその発現制御機構の解明 |
| 主催: | |
| 共催: | |
| 後援: |
要旨
リボソームプロファイリングなどの技術の進展により、真核生物における翻訳の理解は大きく変わりつつある。従来は、1つのmRNAが1つのタンパク質をコードし、翻訳は常にAUGコドンから開始され、5′および3′の非翻訳領域(UTR)は翻訳されないと考えられてきた。しかしながら、近年の研究により、1つのmRNAから複数のタンパク質が産生されること、開始コドンのおよそ20%が非AUGであること、さらにUTRにおいても翻訳が生じることが明らかとなっている。
私たちを含む複数の研究グループによる近年の知見から、ゲノムにはこれまで未同定であった翻訳領域が予想をはるかに超えて多数存在することが示されてきた。これら新たに同定された翻訳産物は「ダークプロテイン」と呼ばれ、生物学および疾患研究における新たなフロンティアを切り拓くものとして注目されている。本講演では、翻訳領域の多様性に関する最新の知見を紹介するとともに、ダークプロテインとその発現制御機構の研究が切り開く今後の展望について考察する。
参考文献
Shiraishi C., et al., RPL3L-containing ribosomes determine translation elongation dynamics required for cardiac function. Nat. Commun. (2023).
Mise S., et al., Kastor and Polluks polypeptides encoded by a single gene locus cooperatively regulate VDAC and spermatogenesis. Nat. Commun. (2022).
Ichihara K., et al., Combinatorial analysis of translation dynamics reveals eIF2 dependence of translation initiation at near-cognate codons. Nucleic Acids Res. (2021).
Matsumoto A. et al., mTORC1 and muscle regeneration are regulated by the LINC00961 encoded SPAR polypeptide. Nature (2017).
担当
東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・脳機能学研究室
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