東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻

Department of Biological Sciences
Graduate School of Science
The University of Tokyo

内部情報 第1527回生物科学セミナー『アリ類のコロニー創設戦略とその至近機構』

生物科学セミナー

第1527回生物科学セミナー『アリ類のコロニー創設戦略とその至近機構』

日時: 2025年10月29日(水) 16:50-18:35
場所: 理学部2号館223号室及びZoom
演者: 宮崎智史 教授(玉川大学農学部)
演題: アリ類のコロニー創設戦略とその至近機構
主催:
共催:
後援:

要旨

アリ(ハチ目アリ科)は代表的な社会性昆虫の一つで,14,000を超える種が地球上の様々な環境に進出・適応している.こうした広範な環境への適応には「蟄居型創設」とよばれるコロニー創設戦略の獲得が重要だったと考えられる.社会性ハチ類では交尾をした若い女王が単独で営巣・産卵を開始し,巣外で集めた餌を幼虫に与えて最初のワーカーへと育て上げる創設戦略が一般的だが,蟄居型創設を行うアリでは若い女王が交尾・営巣後に巣に籠り,餌を巣外から得ることなく育児を行う.この時,女王は採餌に伴う被食リスクを回避できる一方,自身の組織を分解して餌を生産しなければならない.
また,アリでは55以上の属にて,女王が上記のような単独での創設を放棄し,ワーカーを随伴して創設することで育児をワーカーに任せる「従属創設」が獲得された.この戦略は資源の乏しい環境や過酷な環境条件のもとで適応的であり,より多様な環境への進出を可能にしたと考えられる.
本セミナーでは蟄居型創設及び従属創設の様式,そしてそれらを実行する女王の形態的適応,発達過程,ゲノム配列や遺伝子発現について紹介し,その至近機構や進化について議論したい.

参考文献

1. Kurihara, Y., Ogawa, K., Chiba, Y., Hayashi, Y., Miyazaki, S. (2022) Thoracic crop formation is spatiotemporally coordinated with flight muscle histolysis during claustral colony foundation in Lasius japonicus queens. Arthropod Structure & Development 69: 101169.
2. Cronin, A. L., Azuma, N., Miyazaki, S., Oguri, E., Schwarz, M. P. and Ito, F. (2020) Geographic patterns in colonial reproductive strategy in Myrmecina nipponica: Links between biogeography and a key polymorphism in ants. Journal of Evolutionary Biology 33: 1192–1202.
3. Miyazaki, S., Murakami, T., Kubo, T., Azuma, N., Higashi, S. and Miura, T. (2010) Ergatoid queen development in the ant Myrmecina nipponica: modular and heterochronic regulation of caste differentiation. Proceedings of the Royal Society B 277 (1690): 1953-1961.

担当

東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・附属臨海実験所
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