生物科学セミナー
第1521回生物科学セミナー『力学的な視点から捉えた葉の構造とその多様性』
日時: | 2025年6月18日(水) 16:50-18:35 |
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場所: | 理学部2号館223号室及びZoom |
演者: | 小野田雄介 教授(演者所属)京都大学農学研究科 |
演題: | 力学的な視点から捉えた葉の構造とその多様性 |
主催: | |
共催: | |
後援: |
要旨
葉の光合成に関する知見は多いが、葉の乾物量の1~7割を占める細胞壁の役割に関する知見はあまり多くない。葉は、効率的な光吸収のために薄く平らな構造をもっているが、多少の風雨にさらされても壊れず、長いものでは10年以上の寿命がある。薄さと丈夫さという相反する条件をどのように満たしているのだろうか?葉の断面をみると、外側の表皮組織と内側の葉肉組織に大別でき、飛行機の翼などに使われているサンドイッチ構造(軽い割に曲がりにくい)に似ている。発表者は、葉の組織を分解せずに、表皮組織と葉肉組織の硬さを測る方法を考案し、様々な植物の葉に適用した。その結果、葉は極めて効率的なサンドイッチ構造をもち、薄くても丈夫という条件を巧みに満たしていることがわかった。 また様々な植物種の葉の耐久性(寿命)と光合成効率を比較すると、両者の間には一貫したトレードオフが見られ、そのメカニズムについても研究をしてきた。長寿命の葉は、細胞壁の割合が多く、(i)資源の配分のトレードオフと、(ii)葉内CO2コンダクタンスの減少を介して、光合成速度に負の影響をもたらすことを定量的に示した。細胞壁は、葉の機能や形質多様性を決定づけるキープレイヤーと言える。
参考文献
- Onoda Y, Schieving F & Anten NPR. (2015) A novel method of measuring leaf epidermis and mesophyll stiffness shows the ubiquitous nature of the sandwich structure of leaf laminas in broad-leaved angiosperm species. Journal of Experimental Botany 66: 2487–2499
- Onoda Y, Wright IJ, Evans JR, Hikosaka K, Kitajima K, Niinemets Ü, Poorter H, Tosens T, Westoby M. (2017) Physiological and structural tradeoffs underlying the leaf economics spectrum. New Phytologist 214: 1447–1463
担当
東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・植物進化生態学研究室
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